『朝日新聞』(2003年1月6日)の「青鉛筆」欄に「正月の墓参り、意外と人気?」との記事がありました。
墓石販売の大手会社が東京と千葉の霊園で生花の販売額を調べたところ、正月が、春彼岸の売り上げの4割以上だったことがわかり、「意外と多い」ということです。
お正月の成人式は聞いたことがありますが、「正月の墓参り、意外と人気?」とは初耳でした。
お墓といえば、『往生要集』の絵解きである来迎寺六道絵の人道不浄相図に画かれた、見るも哀れな、暗く寂しい雰囲気を想像してしまいますが、それは昔の話。 最近はスペインの都市型庭園やドイツの郊外型庭園を取り入れた「ガーデニング霊園」まであります。
これまでの日本人のお墓参りといえば「先祖の供養」が第一の目的でした。 しかし、最近のお墓参りは、家族との「心と心のふれあいの場を求めて」「バラ咲くガーデニング霊園」へ「楽しいピクニック」ということになりつつあるようです。
また、お墓の形も、現在の日本の墓地の多くを占めている和型三段墓から、故人のライフスタイルにあわせた碑が建立されつつあります。 家名でなく、故人の好きな文字を刻んだり、法名(戒名)でなく、俗名を刻んでいるお墓もあります。お墓参りをして亡き故人とゆっくり対話をする、「ふれあい墓」ということです。
こうしたことは、「○○墓苑」「○○霊園」から、最近の「○○メモリアルガーデン」「○○ふれあいパーク」などへの、霊園名の変遷にもあらわれています。
霊園の広告の多くが「自然の恵み」「安らぎの環境」など、自然との調和をうたっています。 「コゲラやムクドリが暮らす森で家族が集う−そんな新しい霊園の誕生です」まであります。「自然の恵み」や「安らぎの環境」を求めているのは、故人ではなく、実は残された家族であるのかも知れません。
新聞記事の「正月の墓参り」は今年だけの現象であるのか、それとも今後より顕著になっていくのか、いま、なんとも判断はできません。 しかし、こんなところに、無宗教を名のりつつも、レクリエーションを兼ねて、先祖への感謝と家族の絆の大切さを子や孫につたえていきたいという、日本人の宗教意識をかいま見ることができるように思います。
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池田 行信
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