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「花まつりの想い出」



 かつて駐在していたカナダのお寺から、毎月”Dharma Express"というNewsletterが届きます。
 駐在中は寺報の原稿や英語訳に悩まされましたが、今は忘れずに送られてくるこのNewsletterが懐かしく、編集、印刷、発行すべてがメンバーのボランティアで続けられてる寺報の届くのを楽しみにしています。

 昨日届けられた3月20号には、

 ”The Dharma School will be visiting the Hospital and Convalescence Homes in the area. We will attempt to visit all facilities, which Temple members are currently residing. This is a tradition that reaches back to the beginning of Dharma School in Kelowna, 51years ago.”

と花まつりの記事が載っていました。

 ケローナ仏教会の子供達は毎週サンデーダーマスクール(日曜学校)に集まりますが、そのダーマスクールが始まってから51年も続いている花まつりの伝統行事に、「病院訪問」があります。
 子供達は(女の子は着物を着て、)この時季に咲き始める水仙を抱えて、入院患者のお見舞いに行きます。

 「今日はお釈迦様の誕生日です。お見舞いに来ました」
 「早く元気になって下さい」

そう言って、病室を一つ一つ訪問する子供達の姿を思い出しています。

 Kelowna市の病院では、お見舞いのボランティアを認められた宗教団体や宗教家には駐車場の使用許可書も発行され、新興宗教やカルト教団の勧誘や発行物等もきちんと阻止されていますが、日本では、既成の宗教団体のこうしたボランテアは排除され、看護婦さんや付き添いの人たちが勝手に勧める新興宗教には何の対策もされていないようです。

 開教使の重要な仕事の一つがこの、月に何回かの病院見舞いでした。
 ボランティアルームには入院患者のリストが宗教毎に分けてあり、誰が何の病気で何日から入っているか、担当医師は誰かなど一目瞭然になっています。
 入院患者が気弱になって泣いたりしていると担当医から「来て力づけてやって欲しい」と電話が来ます。
 宗教家はICUにも入室が認められており、「可能な医療的処置はすべてしました、あとは先生(開教使)に来てもらいなさいと言われました」と家族からの電話を受けてあわてて入って、臨終に立ち会ったこともあります。
 
 カナダでの「花まつりの想い出」にはもう一つこんなこともありました。
 ちょうど私が駐在してまもなく、着飾ったベトナムの家族がお寺にお参りに来ました。
 本堂に案内し、お線香を渡すと、丁重に何度も額に掲げお参りをしています。
 「今日は何か特別な日ですか?」と訪ねますと、
 「ベトナムではお釈迦様の誕生日です。仏教のお寺があると聞いて、お参りに来ました」と晴れやかに言って、私にも「お祝いです」と小さな袋を渡して帰っていきました。
 中には10$紙幣が折り畳んで入っていました。

 私たちがもし外国で4月8日をむかえたとしたら、仏教寺院を探してまでお参りに着飾って出かけるだろうか、と恥ずかしくなったものです。
 繰り返された花まつりの姿です。心したいものですね。

合 掌

 

元カナダ開教使 谷山 憲丸