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「西本願寺展の解説文英訳について」

  この度、本願寺御影堂平成大修復記念の一環として、上野の東京国立博物館で「西本願寺展」が3月25日から5月5日まで開催されております。

  上野に出かけることができたのは、決して初期ではなく4月4日でした。この日に行ったのは、親鸞聖人の「鏡御影」(国宝)が6日までしか拝見することが出来ない期限付き展示であったからです。この件に関してはあまり多くの人に知られておらず、期待して6日以降に行かれた方も多かったと思います。関東の地で初めての展示でしたので、期間限定にせずより多くの方に見ていただきたかったです。

  「西本願寺展」の展示物に関しては、国宝や重要文化財が目の当たりにでき、また歴史的にも素晴らしい内容でした。また、海外よりの来場者のために、英文解説も用意されていましたが、それに一部に気になる表現がありました。

  英語を読まれる方がキリスト教の表現の方が伝えやすいであろうとの訳者の配慮でしょうか、西本願寺の宗派内では使わない言葉や表現が大変気になりました。PRAYER(祈り、祈祷、嘆願)やAmida descending from the Heavens「天から降りてくる阿弥陀」など ふさわしくない表題が目に付きました。

  特に、親鸞聖人御染筆の「南无阿弥陀仏」(六字名号)についての表題は「Six-Character Nenbutsu Prayer」【六文字の念仏の祈り】となっております。PRAYERの言葉が持つ宗教的要素が自然に伝えられるので、訳者はこの言葉を使ったのだと推測します。しかし、この六字名号を仰ぐ宗派にとっては重大な問題です。また、本派本願寺では、原則としてNembutsuとローマ字表記しています。同様の指摘が十字名号にも言えます。内容点検がされていたならば、このような問題は起こり得ないはずです。

  「祈り」は、昨年の秋頃、西本願寺で問題となりましたが、このようなところで再浮上するとは、まだ問題は解決していなかったという事でしょうか。

  この度の西本願寺展はすばらしい企画だったと思います。しかし、展示並びに図録の解説文の英訳について、当の本願寺が十分に監修を実施し得なかったことはとても残念なことであったと思います。

展示並びに図録の英語解説の訂正例
(本派準拠)
nenbutsu
Namu Amida Butsu
Jodo Shin sect
Amida Nyorai
Nyorai
Nembutsu
Namo Amida Butsu
Shin Buddhism
Amida Buddha または Tathagata Amitabha
Tathagata
六字名号は "I take refuge in the Amida Buddha"

十字名号は "I take refuge in The Tathagata of Unhindered Light filling the ten directions" (another name for Amida Buddha)

専修念仏 nenbutsu prayer は The exclusive practice of the Nembutsu

光明本尊 Glory to the Name of the Buddhas は Amida Buddha depicted as Light 

(来迎図)Amida descending from the Heavens は Amida Buddha coming to embrace the dying

山本 浩真