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コラム 03.10.16 



「仏教の役割」


   国際社会では、 一方的な価値観の押し付けで世界中で不毛な戦争が起こり、また私たちの周囲の地域社会でも、同じように一方的な価値観の押し付けで不毛な争いや事件ばかりが多発するような社会になりつつあるような気がします。


  先日、ある会合で龍谷大学前学長の上山大峻先生の講演を聞く機会がありました。その講演のなかで、上山先生は、現代社会がもっとも必要としているのが仏教の考え方であることを強調されました。

  上山先生のご専門は、西域仏教でありますので、過去に栄えたシルクロードの国々の例を挙げて次のようなお話をしてくださいました。

  シルクロードの遺跡は、そのほとんどが仏教遺跡です。東西の文化交流の要所として栄えた国々は、まさにいろいろな民族の交流の場であったのです。それを可能にしたのが仏教であったのです。バーミアンの石仏に代表されるように、旅人は仏像や仏塔を見て安心することができたのです。

  仏教には、排除の考え方はありません。教えを通して平等を説くのが仏教です。シルクロードの国々もそれぞれ民族が異なります。仏教東漸という言葉がありますが、他を排除して教えを急速に広めるということはしていません。それぞれの文化の中に仏教は徐々に浸透して行ったのです。そこに、多くの民族の交流が保証され、旅人に安心感を与えてきたのです。



  私は、上山先生のお話で、大きなヒントをいただきました。

  一方的な価値観の押し付けをしない仏教の考え方が、価値観の相違を克服できずお互いに正義を振りかざし戦争を繰り返す国際社会にどれだけ通用するのかはわかりません。しかし、シルクロードの時代の西域の国々のような役割を果たすことができるのではないでしょうか。

  そしてまた、地域社会にあっても、最小単位の社会である家庭にあっても、「おかげさま」「おたがいさま」と言い合える仏教の考え方が、もっとも必要とされているのではないかと思います。

  例えば、核家族化によって、善きにつけ悪しきにつけ家族社会を支えてきた大切な文化が失われつつあります。かといって、もう大家族の時代に戻ることはできません。

  したがって、現代社会であるからこそ、仏教の考え方が大切になってきているのではないかと思います。もう一度仏教についてみなで考えていく必要があるのではないかと思います。

小林 泰善