特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク(以下アーユス)が今年発足10周年を迎え、先日、築地本願寺にて記念行事が行われた。 JVCをはじめとする日本の代表的なNGOからの賛辞には、アーユスの日本NGO界における立ち位置の大きさを確認させるものがあった。
アーユスは発足当初から特異とも言えるユニークな活動方針をとった。
まず第一に、現場を持たない。現場へ直接支援をするのではなく、現場で活動をしている他団体の「運営部分」を支援するという方針である。なぜなら海外協力の実際においてはそこが非常に重要なのにもかかわらず一番手薄な部分だからだ。
「お坊さんが海外協力」と言うと、まず学校建築であるとか井戸掘りとか、そのための募金活動がまず連想される。 現地で苦悩する人々や子どもたちに笑顔を贈ろうという運動は美しく、だからこそ理解も資金も得やすい。
しかし理解を形にしていくのは他ならぬ人間であり、今ここと現地を結ぶ間の様々な事務費人件費諸経費が発生するのは当然であるのに、ここには資金が集まらないという現実がある。 それによって尊い有意義な活動にもかかわらず、事業の発展や継続がままならないという事態に至るケースがあまりにも多いのだ。
また、そういう困難な中での活動は往々にして自己撞着に陥ることも少なくない。
アーユスの第二のユニークな点は、事業の「評価」に対して支援を行っていることである。
多くの団体は事業において、計画がいかに遂行されたかの点検が怠りないのは言うまでもないが、その事業自体の意味を含めての振り返りがなされることはまだまだ少ないのが現状だ。 それでは事業としても団体としても活動を深めていくことは困難であり、評価の重要性は近年益々認識されてはきているが、事業の遂行に追われて評価にまでは人的資金的余裕がないのが実情と言える。 アーユスは事業の評価を資金面で支援するとともに、書籍『国際協力プロジェクト評価』(国際開発ジャーナル社)を発刊するなど、手法面での支援・研究も行っている。
アーユスの二大特色である人件費支援と評価支援は、NGO界では誰もが必要としながらなかなか携わろうとしない分野である。 それはアーユス発足した、「NGO」という言葉も知られていなかった10年前がそうであったし、10年後の今も実はほとんど変わっていない。それはもちろんこの事業の意義を一般に伝えきれていないアーユスの非力にも因があることは認めざるをえまい。
国際協力は、今この時代に自分と他者が一緒に存在していることの意味を教えてくる大きな機縁である。 その仕事を担うNGOの縁の下にあって、一見迂遠だが極めて実践的な作業をアーユスは今後も続けていく。 この団体が名称に「仏教」と掲げていることを仏教関係者はもっと誇っていいと思うのだが。
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松本 智量
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