最近のニュース 03.12.01 



ハンセン病元患者の宿泊拒否問題


先日、熊本県の黒川温泉にあるホテルが、国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園の元患者たちの宿泊を拒否するという事件が起きた。

 報道によれば、熊本県庁による「ふるさと訪問事業」の旅行として企画されたもので、県側は病気は完治しており、感染の恐れはないと説明したが、ホテル側は「世間でそう認識されているとは限らない。ホテルのイメージダウンにつながる可能性もある」と聞き入れなかったそうである。
 その後、ホテル側は恵楓園を訪れて謝罪したが、元患者たちは謝罪を受け入れていない。

 未だにこんな事が起こるのかと、ホテル側の人権感覚のなさに呆れるばかりだが、問題はもっと根深いと言わざるをえない。
 というのも、この事件が報道されるや、旅館組合や県庁に抗議の電話が殺到したそうであるが、中には「ホテルの対応は間違っていなかった」とホテル側を励ます内容の電話も少なからずあったそうである。

 ハンセン病については1世紀近くにおよんだ隔離政策がようやく1996年に廃止され、2001年には今回の事件の舞台となった熊本の地裁において、国のハンセン病隔離政策は憲法違反だったとする判決があり、元患者に救済の道が開かれている。
 しかし、隔離政策が廃止され、このような判決が出たからといって、ハンセン病に対する偏見と差別がなくなったわけではない。そのことを、今回の事件は改めて見せつけている。

 そもそも、隔離政策が廃止された今も、多くの元患者たちが療養所にとどまらざるをえず、肉親との再会も思うようにならないと聞くが、そのこと自体が、ハンセン病に対する偏見と差別の根強さを物語っている。
 そんな中で企画された「ふるさと訪問事業」でこんな目にあうとは、元患者たちの怒りと痛みは察するに余りある。

 ハンセン病の問題については、隔離政策を取ってきた国に大きな責任があるが、それだけではなく、それを長い間放置し容認してきた私たち国民一人一人にも責任がある。
 特に私たちの教団は、療養所への慰問布教などを通して長年にわたって関わりながら、隔離政策を問題視できず、それどころか第二次世界大戦前には積極的に国に協力してきた歴史がある。
 そのことを思うと、たんに今回のホテルを非難するだけではなく、私たち自身が深く反省し、差別と偏見をなくすための地道な努力を行っていかなければならないと強く思う。
 司法によって政策の誤りを正すことはできても、人々の心の中にある差別と偏見はそう容易には解消されないことを今回の事件が物語っているのだから。


                            柘植 芳秀