朝日新聞(1月28日付)に
「揺れる『黄色の運動』 自衛隊員の無事願う旗・ハンカチ」という記事がありました。はじめの部分を引用します。
北海道旭川市で、黄色の旗やハンカチがはためき、黄色いリボンを胸につける市民が目立ち始めた。 陸上自衛隊のイラク派遣で、第一陣の中核となる第2師団の地元。経済人や隊員OBが無事帰還を祈ろうと、道内が舞台の映画「幸福の黄色いハンカチ」にあやかり呼びかけた。 師団側は歓迎しているが、派遣反対派は「旗を掲げることは派遣を前提にしており、是非論を覆い隠すことになる」。 賛否が割れた世論を象徴する波紋が広がっている。
記事のなかには、60代の男性が「まさに21世紀の千人針」と語ったことも紹介されていました。
黄色いハンカチやリボンが、即派遣賛成の意思表示とは言えないと思います。 隊員の無事を願う思いは、派遣反対の人々も同じ思いだからです。(ただし個人的には、黄色いハンカチという発想は「おまじない」めいていてあまり好きになれませんが……)
この黄色の運動はどのような観点から始まったのでしょうか。
1月なかばごろ、札幌ゆきまつりに協力している自衛隊第11師団の師団長が隊員への訓示で、イラク派遣反対の活動が過ぎて協力できる環境でなくなるなら、まつりからの「撤収も含めて検討する」と語ったということが報じられていました。 とてもいやな記事でした。国民の自由を守る自衛隊の師団長が、国民に圧力をかけるようなこの発言は、戦時の言論統制をイメージさせるものがあります。
そして、黄色い旗やハンカチが、自衛隊員の士気を気づかうあまり飛び出た師団長の発言に象徴されるような意見に呼応しての自衛隊員への激励の意思表示だとしたら、この運動も言論統制に近い動きと深読みすることもできます。
しかし、黄色の運動に参加する多くの人々は、純粋に隊員の無事を願っての行為と考えます。
ただ、記事の中に、「自民党国会議員事務所が黄色い旗を掲げた」とあるのには驚きました。 非戦闘地域に復興支援を行うために派遣することに賛成しておきながら黄色い旗を揚げて、「無事帰って来て」はないでしょう。 無責任極まりない行為と思います。隊員は国家の命令によって危険な地域に派遣されるのです。 隊員のいのちが本当に心配なら、派遣を止めさせるべきです。
国会では30日の夜から31日の未明にかけて衆議院で自衛隊のイラク派遣が承認されました。 そのニュースを見ていましたら派遣賛成議員の多くに黄色のリボンが見えました。
千人針は、銃後の戦意高揚を煽るために利用されました。しかし、その千人針は、戦後の私たちに戦争の無意味さ虚しさを象徴するものとして語り継がれています。
政府には、黄色い旗が虚しさと切なさを象徴するものとして揺れ続けることがないようにする責任があります。 イラク復興支援のために、本来なら必要のないはずの人殺しの道具を大量に持っていかなければならない矛盾を、小泉首相は理解できているのでしょうか。
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小林泰善 2004.2.1
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