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 05.01.01 


「マンション坊主について」


    2004年12月10日号と17日号の『週間ポスト』に〈潜入取材〉「お葬式の危ない秘密」と題された記事が掲載されました。

 大見出しは10日号が「葬儀社とマンション坊主はこうして遺族をボッタクる!」で、小見出しが葬儀社に関しては「家を見てから値段を決める」「骨壷の値段は原価の10〜20倍」などで、僧侶に関しては「キックバック率を書いて営業」「葬儀社が偽坊主を自社養成」などとあり、フッターには「●棺・祭壇=使い回し」「●お経=他宗派でもOK」「●戒名=あの世でホームレスになると遺族を脅迫」とあり、悪徳葬儀社と、寺を持たず読経代や戒名代で生活する(本文のまま)いわゆる「マンション坊主」と呼ばれる僧侶の実態を暴いた記事でした。(以下、このような僧侶をマンション坊主と呼ぶ)

 17日号は第2弾として大見出しが「葬儀社と病院が結託!遺体争奪ビジネスのバチ当たり現場」で、小見出しが葬儀社と病院との関係では「病床数×10万円の裏ガネが横行。
 バカ高葬儀の裏をさらに暴く」「ツケは全部遺族が払う」「看護師へのマージンは10%」などで、僧侶に関しては「お経もショートカット」と手抜きなどの実態を暴露しており、そして<潜入取材>の最後には「価格比較サイトを活用せよ」と読者へのアドバイスもありました。

 見出しを読んだだけで記事の内容は大体想像がつくことと思います。
 悪徳葬儀社に関しては以前から葬儀慣れしていない遺族の弱みに付け込んだ商売の暴露記事が週刊誌などに掲載され問題が指摘されておりましたが、病院の「遺体ビジネス」と「マンション坊主」の実態に関しては一般人はほとんど知らない内容であったと思います。

 病院の「遺体ビジネス」に関しては、有名私大の付属病院が葬儀社数社と一社当たり年間3千万円ほどの契約金で指定業者としての契約を結んでいることや、看護師は遺族を紹介する見返りに葬儀社からマージンを貰っている現実があるとのことです。

 葬儀社が多額の契約金やマージンを支払ってでも病院と契約するのはそれ以上の暴利を遺族側から得ているからだと記事は指摘しておりますが、マンション坊主と呼ばれている僧侶も葬儀社にキックバックするお金は遺族から巻き上げたいわゆる読経代や常識外れの額の戒名代からです。

 こうしてみると死の現場にいる「病院」や「看護師」を頂点としてその下に「葬儀社」、そのまた下に「マンション坊主」や「仕出し料理店」「仏具店」などが並び、一番下が「遺族」となっている葬祭ビジネスの構図がよく分かりますが、「遺族」以外は裏金でつながったやくざの組織のような関係です。

 『週間ポスト』が指摘するように一般人は普段から価格比較サイト等で葬儀に関する知識を蓄え、いざという場合に葬儀社やマンション坊主などからボッタクられないよう注意しておく必要がありそうですが、浄土真宗僧侶の立場から、いわゆる「マンション坊主」と呼ばれる僧侶(特に浄土真宗)の実態と、被害者である遺族の状況を考えたいと思います。


@マンション坊主とその被害者が生まれる環境

 まず、マンション坊主が出没する地域はほとんどが大都市です。そして彼らの多くは真宗寺院に所属する正式な僧侶ですが、大多数は過疎地方などの寺院の衆徒(「しゅと」僧籍は持つが住職ではない者)です。
 彼らは仕事の関係で大都市に居住し一般企業に就職したままマンション坊主になった者、あるいは退職後になった者、それともマンション坊主としての金儲けが目当てで大都市に居住している者、ひょっとして都市開教をめざして大都市に来たが何らかの理由でマンション坊主になった者など過程はいろいろだと思いますが、とにかく大都市の特性である隣人や地域、そして宗教への無関心性を隠れミノとして金儲けのために僧籍を活用させているのです。

 マンション坊主の被害者である遺族にも問題があります。
 仕事の関係などで地方から転居して大都市に住むようになり、家族などの中に亡くなった者がいなかったためご縁のある寺院がなかったことは理解できますが、もし家族の誰かが亡くなった場合はまず以前にご縁のあった寺院に相談し、寺院名簿などで自分の家の近くにある同じ宗派のお寺や宗派の別院などを紹介してもらうべきです。
 自分で相談できないのであれば故郷に住む親類などにお寺へ相談に行ってもらうよう頼むのが普通だと思います。
 そういった努力もしないで葬儀社に僧侶の手配まで任せっきりにして「マンション坊主にボッタクられた」と騒ぐのは少しおかしいような気がいたします。

 すべてとは言いませんが大都会のほとんどの葬儀社やそこに働く社員は、遺族の都合よりも自社や個人の利益を優先しますので、キックバックのあるマンション坊主に葬儀を斡旋するのは当然のことだと思います。
 そして葬儀社が利益を優先するということは、遺族の居住する町以外に拠点を構えるマンション坊主であっても、キックバックの率によって平気で遠隔地の葬儀に出向させるということです。

Aマンション坊主の問題点

 遺族の日頃の宗教への無関心がマンション坊主の発生とボッタクリ被害の遠因ともなっているのは上記の通りですが、次のような問題も現実に起きております。
 それは、マンション坊主は寺を持たないため、葬儀社の持つ会館や遺族の住むマンションなどの集会所での通夜・葬儀などしか行わず、その後の遺族の方々への布教や教化活動はおろか、四十九日(満中陰)や年回法要などの法事も行いません。

 葬儀社は遺族に対して、マンション坊主が法事の会場となる寺院を持ってない(法事が出来ない)ということの発覚を恐れてか、あるいはキックバックの率によって遠隔地から来たということを知られないために、マンション坊主の住所や氏名を隠している場合があります。もちろん当のマンション坊主も架空の寺院名を名乗って通夜や葬儀を執行しております。

 問題はそのような詐欺にも似た行為によって通夜や葬儀を終えた遺族はもちろん、遺族の住まいに近い既存の寺院にも葬儀社やマンション坊主に対する不信感と怒りが生ずるということです。
 それは葬儀を執行した僧侶に遺族が連絡を取ったときに「遠隔地のため以後の法事は行えない」と断られたり、連絡がまったく取れない(架空の寺院ですから当然です)ことから発生する問題です。

 遺族は慌てて近隣の同じ宗派の寺院を探して法事の依頼をいたしますが、問題の葬儀社が近くにある寺院の場合「またか」といった思いでその葬儀社とマンション坊主に対する不信感が増幅されます。
 既存の寺院の中には「最後まで責任を持って遺族に対処せよ」とマンション坊主に対して厳しい批判をする住職もおりますが、まったくその通りです。

 仮に葬儀以後の法事をマンション坊主が行ってくれたとしても、マンション坊主とご縁があった遺族は宗派とは完全に隔絶された存在になります。
 遺族は、私たち浄土真宗本願寺派でいいますと、組(地域の寺院の集まり)や教区(組が集まった地方の組織)の行事や集まりには参加できません。参加したくてもそのような情報をマンション坊主が発信するはずがないからです。
 私が一番悲しいのはこの点です。

 マンション坊主本人は確かに浄土真宗本願寺派のどこかの寺院に所属する僧侶なのですが、門信徒は地元の組や教区・宗派に所属できないのです。そしてそのことを門信徒が知らないということに忸怩たる思いがいたします。
 もうそろそろこのようなマンション坊主を宗派は毅然とした態度で取り締まるべきではないでしょうか。
 架空の寺院名(「浄土真宗本願寺派○○寺分院」等)を名乗って葬儀などを行うことは立派な詐欺罪だと思いますし、事情を知らない門信徒の存在をこのまま放置しておくことはできません。
 さらに、こういったマンション坊主の存在が、現在宗派が進めようとしている都市開教の足かせにもなっているのですから。
 皆さまもぜひご一考いただき、一緒に行動を起こしましょう。
                        
                     橋本正信