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 05.05.01 


反日デモと首相の靖国神社参拝問題



  靖国神社の春の例大祭に、国会議員80人が参拝し、別に麻生総務大臣も参拝したというニュースが流れていました。
 今、靖国神社をとりまく問題は、感情論を孕みながら政治問題の様相をいよいよ深めています。

 中国の反日デモによる暴動のニュースは、国内では概ね冷静に受け止められていると思います。しかし、そうは言いましても、強いインパクトを与えていることは間違いありません。そして、中国政府のかたくなな姿勢は、ニュースを見る私たちにとりましても小泉首相や閣僚らの靖国参拝の問題に強い関心を寄せなければならなくなります。

 先日、法事のお斎の席で話題が反日デモの話になりました。すると、いたる所で靖国参拝の話がはじまり靖国神社は日本人の心の拠り所だというような話になっているのがわかりました。若い人を含め靖国神社に関心のなかった人々などが、反日デモに対する感情的な拒否感から一時的にでも靖国シンパになる可能性が高いことを痛感しました。

 政治問題化した靖国神社参拝問題に関して、参拝することの有無が外交問題での中国に対する勝ち負けという基準で感情的に判断されてしまい、「小泉頑張れ、靖国参拝のどこが悪い、日本の文化だ」と短絡してしまう傾向があると言うことだと思います。決して靖国神社がどういう施設であるかを理解したと言うことにはなりません。

 このような状況に、私は大きな不安を感じています。中国でも韓国でもデモの中心は日本との戦争を体験していない人たちです。だからこそ「愛国無罪」などと教条的で画一化したうねりになっているのではないでしょうか。そして、ややもすると日本では戦争を知らない教条的な靖国シンパが生産されつつあるということになるのでしょうか。

 私たち浄土真宗は、小泉首相や国会議員の靖国神社参拝に一貫して反対の表明をしてまいりました。それはあくまでも信教の自由を侵す極めて宗教上の問題として、靖国神社国家護持の動きに反対してきたものです。

 最近の状況は、首相の靖国神社参拝問題が、あくまでも政治・外交上の問題として認識され、さらに反日運動に対するナショナリズムの高揚の手段になる雰囲気があります。小泉首相の外交上の失敗もその一因であると考えられる反日デモ暴動が、むしろ日本人のナショナリズムを刺激したとするならば歴史の皮肉としか言いようもありません。

 新たな国立の戦没者追悼施設建設の論議の時点に戻っていただきたいと思います。政治的・宗教的背景を背負わずに、また信教の自由が保証される、怨親平等に追悼できる施設を必要としているのではないかと強く感じているところです。


小林 泰善