今年の千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要は、本山総御堂への右翼乱入事件の直後でありましたので、千鳥ヶ淵戦没者墓苑の入り口には警察官が配備され、また、ご門主にはSPが2名ついていました。ただ、物々しい雰囲気はなく、法要はいつも通り粛々と勤修されました。
18日は日曜日でしたので、僧侶の参加は例年より少なく感じられましたが、門信徒の参加は多く、用意された椅子では足らずあとから椅子が追加して並べられました。ご門徒のこの法要への期待が大きいことが伝わってきたような気がいたします。
今年は11年ぶりに、ご門主が導師を勤めるご親修での法要が勤まりました。近年、ご門主は臨席はされてはいましたが、ご親修ではありませんでした。
ご門主は、ご親教(法話)で、宗門が千鳥ヶ淵全戦没者法要を実施することになった初期の目的(願い)を確認され、「私たちの現実を見つめることなく、単に絶対平和だけを主張しても言葉だけになってしまう恐れがあります」と、仏法を踏まえた現実的な非戦平和論を構築しなければならないことを指摘されました。
現在の宗門の非戦平和への取り組みが停滞している現状を憂い、一石を投ずる思いを込めての発言であったのではなかろうかと推察いたします。
現実的な取り組みとは何か。右傾化を強める政治状況の中で、9月2日には右翼の乱入事件も起こりました。意見の違いを認めない風潮は憂慮すべき段階に至っています。そのような社会状況であるからこそ、宗門の非戦平和への願いが、多くの人々の共感を得られる活動となることが重要です。
多くの門徒の皆さまに囲まれて、千鳥ヶ淵法要の意義をあらためて確認させられた法要でありました。
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小林 泰善 |
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