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 06.04.16 


「黒魔術???──報道の良識」

 4月4日頃、テレビで、宇都宮で「黒魔術で呪い殺す」と脅して東南アジア系の女性たちに売春を強要していた外国籍の女たちが、人身売買や強要の疑いで逮捕されたというニュースが報道されていました。

 貧困なるが故に、充分な教育も受けられず、未知の国に連れて来られ、脅され続けて売春を強要される。
 このような時代がかった犯罪が、日本を舞台にして行われている。私は、豊かな日本の一角に、こんなに女性が虐げられる悲惨な陰の存在があることを捉えたニュースがはじまるのかと思いました。

 ところが、そのニュースは、黒魔術がいろいろな国で行われていて恐ろしいものであると音響効果入りで紹介して終わってしまいました。

 一瞬あっけにとられ、そして、無性に腹が立ってきました。 こんなに悲惨な目にあっている女性たちがいる事件を紹介しながら、そこに目も向けず、こけおどしの魔術をさも真実かのごとくに報道する姿勢からは、報道する側の良識は微塵も見えてきません。

 また、14日のテレビのニュースで、エジプトの教会で悪魔払いの儀式が大変繁盛しているという報道がありました。
 悪魔払いの集団ヒステリー症状の場面は絵になります。
 報道する側は、人の目を引く面白いものを流すということしか考えていないのでしょう。
 そのニュースでは、エジプトの宗教家らしき人物が、このような現象は貧困や社会不安から生ずる病的な一時的な現象だと言っているところも放送されていましたが、その部分はほんのつけたりでした。
 報道する側のニュース選択の基準は、如何に視聴率を上げるか、人目を引く面白いものにするかというところにあるのだということをつくづく感じました。

 某有名占い師が、マスコミにもてはやされ、多くの人々が一喜一憂している姿は、黒魔術に脅され、ますます自由を失って行った女性たちとあまり変わりがありません。
 むしろ、マスコミ自体が、人々の興味を引く映像を提供することにばかり力点を置いているため、神秘的なことや超常現象などをまことしやかに脚色して一般家庭に配信する役割を積極的に担っていると言っても過言ではないような気がします。報道の理念などはどこへやらです。

 私たち自身も、そろそろ、ショーでも見るような感覚でニュース等を見るという姿勢を改めていかなければならなのではないでしょうか。


 小林 泰善