・平和国家、民主主義、人権教育
軍隊をなくした国・コスタリカから、カルロス・バルガス・ピザロさんを迎えて、参議院議員会館内第一会議室で憲法改悪を考える集いが2006年7月6日(木)午後0時半より3時まで開かれました。
主催は、憲法共同会議、コスタリカに学び平和を考える弁護士と市民の会、平和をつくり出す宗教者ネット、平和を実現するキリスト者ネットです。
先ず、コスタリカの紹介ビデオを見ました。印象的なシーンがありました。小学校で子どもたちに、「子どもの権利は何?」と尋ねると皆、「教育を受けること。愛されること」と答えます。では、「愛することは義務?」と聞くと、「愛することは義務ではない」と子どもたちが答えます。
愛しなさいと強制をせまろうとする国にいる人間としてドキリとさせられました。
・コスタリカの民主主義
米州人権裁判所弁護士で、コスタリカ大学教授のヴァルガスさんは、コスタリカについてこう語りました。
「私たちの国は、1949年に軍隊を廃止し、軍事予算を教育、福祉、医療に回しました。」
「コスタリカは子どものころから、徹底して平和文化教育・民主主義教育がなされます。一人ひとりの人間性を大切にする思想、話し合いによる解決の方法、国際社会の現状を広く理解し、政治はみんなでつくり上げていくものだという教育が行われます。だからこそ、争いごとも話し合いによって解決していけるのです。」
「誰もが人権を保障され、無償で教育を受け、子ども、女性、お年寄りが社会に参加でき、医療などの社会保障が整備されている状態、これがコスタリカ人の考える民主主義です。」
・日本の仏教者として
このようなお話を聞くと今、日本は憲法を改悪し、排他的な愛国主義者を育て、「戦争ができる国」にするための動きが国民に明示されぬまま進んでいることが懸念されます。
福祉や医療が切り捨てられる一方、米軍再編のために莫大な税金が使われています。
このような時期こそ、私たちはお釈迦さまの教えを基に、多くの人々に呼びかけていきたいと思い、宗教者ネットを代表して仏教者として次のような応答をしてきました。
「私たちは、選挙投票率が八割を超えるコスタリカでは、話合いによって問題解決を目指す、真に民主的で人権が尊重される平和的な国家であることを学びました。
さて、仏教者の平和・反戦の運動を支えるのは、釈尊の言葉です。
『すべての者は暴力におびえる。すべての生きものにとって生命は愛しい。己が身にひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ』(『ダンマパダ』)
『兵戈無用〜仏の教えの弘まるところ、兵隊も武器も無用となる』(『無量寿経』)
しかし、言葉だけでは平和は実現しません。私たち仏教者は、かつて昭和の15年戦争の時、釈尊の「非戦」の教えを曲げて戦争賛美と協力をしました。
この痛恨の歴史を繰り返さないために政治と宗教の関係を自立的で緊張関係を持って関わることが重要だと主張します。
その意味で憲法第九条は、仏教や宗教からの理想的ありかたです。しかも観念ではないとして海外からも評価をされています。
どんなことをしても戦争をしてはならぬという立場から、憲法改悪に反対の声を上げます。
元々、憲法は権力者への足かせとして成立した長く重い歴史の背景があることを忘れてはなりません。そして、そこに市民社会の運動としてつながっていく可能性があります。
今、国を愛する教育が押しつけられようとしていますが、愛国心と郷土愛は全く異なるものだと思います。
おかしなことに愛国心のある人が発言をすればするほど他国との関係が悪化します。かつて日本では愛国心と天皇制国家主義がつながり、さらに仏教がこれに加担して侵略戦争を肯定していきました。郷土愛は押しつけられなくとも生まれてくる心情であり、それは他国の人びとと理解しあい、また共存できるものです。
戦時中、日本キリスト教カソリックは教団内で何度も話合いをし、賛成反対の末に大政翼賛会に賛同し教団の保身のために苦渋の決断の末、軍国主義に加担したといいますが、仏教界では話合いなど全くなされずに簡単に時の主張に迎合していったと聞きます。
本日、ヴァルガス教授のお話を聞き、民主的で平和の教育の弘まるところに、人権が尊ばれ、武力を必要としない世界の顕現が可能なことを学びました。改めて、暴力や武力による問題解決をする生き方ではなく、民主主義をもとにして平和的で話合いによる問題解決をする生き方のところに真に人権を尊重する社会が顕現することを再確認しました。
改めて多くの団体と共同して、この憲法改悪の動きに対して反対の立場を確認し、学び合い、そして行動していきたいと思います。
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本多 静芳 |
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