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 06.09.16 


関東大震災後の記録フィルムの出所の真実


   本派本願寺が関東大震災(1923年)直後に発生した大火災などの生々しい被災状況を映した映画フィルムが、最新の復元技術でDVDとしてよみがえったと言うニュースが震災記念日の9月1日配信されました。
 この映像は、本願寺の救援活動の様子も記録された貴重なものです。

 しかし、その報道の中でフィルムの見つかり方がメディアによりまちまちでした。

「同寺によると84年ごろ蔵を壊した際に見つかり・・」(毎日新聞)、「1984年に築地本願寺の蔵が解体された時に最初に発見され・・」(東京新聞)などは事実に近いですが、
「フィルムは84年春、本願寺内にあった蔵を壊す際、処分されたものの中から都内の会社員が見つけて保管していた。」(アサヒコム)はまったく違います。

 第一伝道会館が建つ前、そこにあった、「鳩小屋」、「お蔵」、「一味寮」(独身寮)、車庫、役宅(家族用)、新館(ご門主ご宿泊用、総会所講師ご宿泊に使用)、洗心寮(家族用役宅)が順次解体されていきました。
 解体になる「お蔵」の収蔵物は一端、外に出しお蔵の前に並べられ、上にシートがかぶせられて、数日間が過ぎました。「この状態が処分されたもの」と見られたのでしょう。その後、新館に収蔵物を移しました。
 収蔵物はいろいろなものがありました。長持ちいっぱいに入った「築地別院史」や、雛人形、陶器、大谷探検隊写真のガラス原版、昔の記念品などいろいろでした。
 その数日間がどのくらいかわかりませんが極めて短い間だったと思います。その間に、心なきものにより、収蔵物の一部が持ち去られました。フィルムもその中の一つだったのです。
 
 築地本願寺は今もそうですが、境内を通り抜けて通勤する方が多く、夜まで門は開いています。お蔵はその通り抜け経路のすぐ近くにあったので、外に出された収蔵物は通行人の目に触れやすい状態にありました。
 
 持ち去った者は、そのフィルムを朝日新聞社(朝日放送か?)に持ち込み、当時「朝日放送」で貴重な資料が見つかったと映像が放送されました。
 
 その前後、セルロイド製35ミリフィルムを築地本願寺に返してくれる旨連絡があり、そのフィルムの存在と盗難されたことを、築地本願寺は知ったわけで、35ミリフィルムとビデオにコンバートされたものを返してしていただきました。

 その後そのセルロイド製35ミリフィルムは築地本願寺内で保管されていましたが、管理状態はよくなくただしまってあるだけで、ますます劣化したようです。その後中央区教育委員会が2000年に古文書調査により発見されこのたびその映像がDVDになった言うことです。

 震災映像の他に、その中には、築地本願寺の落慶法要などもあるそうです。築地本願寺はそのDVDを有料配布するようです。

 最後に、フィルムの存在を知らせてくれたことと、ビデオにしてくれたことは有り難いことでしたが、フィルムは築地本願寺が捨てたのではなくて、お蔵から出したわずかな間に盗まれたのです。これが事実です。



 白川淳敬(当時築地本願寺職員)