納豆にダイエット効果があるということで売り切れ続出という騒ぎになった、「発掘!あるある大事典U」のやらせ問題が指摘されてから、次々とテレビ番組の「やらせ」問題が話題になっています。
2月25日の朝日新聞「メディア欄」では、「『やらせ』か『演出』か」と題して、テレビの映像がどこまで許されるかとの特集記事がありました。送り手と受け手に温度差があるとのことで、番組制作会社に勤める男性ディレクターの「すべて真実だとうのみにしている人が多いことに驚いた」とのコメントが載っていました。
私は、番組制作者がこのような感覚で作成していることに愕然としました。コメントしたディレクターは当事者ではないでしょうが、番組制作者側に真実を伝えるというよりも、番組の内容を如何に本当らしく見せるかとの意図が働いていたことは間違いないでしょう。制作者側としての本音は、「してやったり」というところなのでしょう。もし、テレビを見て騙される方にも責任があるということなら、テレビの送り手側の倫理観に問題があるとしか思えません。
ドラマの最後には、必ず「このドラマはフィクションであり、登場人物・団体名等は 全て架空のものです」とテロップが流れます。分かりきったことでありましても、誤解を招かない配慮がなされているのでしょう。
アメリカでは1938年に、ラジオドラマが全米を大混乱に陥れました。火星人が来襲したという迫真のドラマを、事実と勘違いしてパニックが起きたのです。マスメディアの影響力が如何に大きいかを象徴する出来事です。
最近のテレビは、視聴者獲得のためにニュースや情報提供番組も娯楽性が求められる時代になりました。報道と娯楽の境目があやふやになっています。知識を提供する番組は視聴率獲得のために娯楽性が高くなっています。番組制作者にとっては、事実よりも番組をもっともらしく面白く見せる効果を求めることの方に番組制作の比重をおくようになっているのだと思われます。オレオレ詐欺ががいっこうになくならないように、映像のプロの仕事にはころっと騙されてしまうひとは多いのです。マスコミは、放送倫理をしっかりと確立していただきたいと思います。
そして、視聴者である私たちは、どの番組もすべてが事実ではなく番組制作者の意図が潜んでいることを疑いながら見なければならないことを教えられたことでありました。ただし、「あたるも八卦あたらぬも八卦」と言いながらも、有名占い師の言葉に左右されやすい現実を見るにつけ、私も含めて視聴者にどの程度うそを見抜く目があるか、はなはだ不安なところであります。
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小林 泰善 |
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