最近のニュース − コラム
 07.04.01 


国民投票法について私が思うこと



    安倍晋三内閣が、制定を求めようとしているのが、この国民投票法案ですが、正式には、「憲法改正国民投票法案」といいます。それは、国民が投票によって憲法改正を決定できる中立的な法案のように大手マスコミは報道していますが、法案審議が目論んでいるものは、まったく異なるものです。もちろん、憲法第9条を変えて戦争ができる「普通の国」にしようとする安倍首相らの思いと繋がっているということは薄々分かっている人でも、この法案の本当の恐ろしさは伝えられていないでしょう。

    元々、憲法は、国民が国家に対して、権力あるものの横暴を押さえ込むために作った約束事であり、国家が国民に対して作った法律とはまるっきり意味が異なるものです。ところが案外、これが知られていません。なぜなら、私も教えてもらうまで、憲法は国家が国民に対して掲げる理想や理念のようなものだと思っていたからです。一般的な国民には、偏った形でしか情報が届けられていないということになります。

    それと同じように「憲法改正国民投票法案」には、知られていないが様々な禁止事項があります。「国民投票」といいながら、この法案は、「国民投票運動」、つまり改憲に関するほとんどすべての意見表明を規制しているのです。なぜなら、この法案の約3分の1が、そうした自由な運動の規制と罰則に関するものなのです。

    先ず、法案が成立するとマスコミは憲法改正に関する自由な報道ができなくなります。
    次に、公務員が改憲に関する自由な発言や行動ができなくなります。
    そして、教員が生徒に憲法の意義を語るという当たり前のことができなくなります。
    さらに、外国人が憲法改正に関する自由な発言や行動ができなくなります(この条項は一旦、法案から削られましたがいつ復活するか分かりません)。
    国民投票運動に賛同したり、カンパをしたりする自由で当たり前のことが犯罪となり、逮捕され禁固刑や罰金が科せられる法案です。


    さて、数分で株価が下がり億単位の損失をする20歳以下の人間がいる一方、石川地震にボランティアに行く同じような年齢の人間もいるように様々な生き方が本来あります。情報を流す側は、平等に情報は流しているといいます。しかし、それを選ぶ人の意識が既に作られているのは、納豆でダイエットができると本当に考える人びとを今の情報が作ってきたことから分かります。情報は与えられた時、既に価値が付けられています。

    今日(30日)、沖縄戦で日本軍が地元の住民の集団自決を強要したことは今後、日本の高校の教科書に載せないという決定が報道されました。NHKをはじめ、日本軍の関与について誰も疑いもできない沖縄戦報道番組をしてきたのに、何を今更というようなことが決定されたのでしょうか?これに関して安倍首相のコメントは、知らぬ顔のハンベイでした(この言葉が死語?)。しかし、タミフルについて、関係ないと言っていたのが、その後、状況が変わると大臣も公式発言はコロコロ変わっています。

    憲法改正は国民の同意と意向によって成り立つものであるのに、政府や、国会議員など公僕がそれに当たること自身、憲法によって禁じられています(憲法99条)。さらに、同法案では、マスコミに意見広告することの自由は保障しています。改憲して戦争のできる国にしようとする保守政党や財界には広告を出せる潤沢な財源があるでしょうが、改憲を問題にする市民レベルの運動は財源では全く太刀打ちできないことが今から明白です。今は審議ですがもし、この法案が上程されれば、国会では数の上から成立してしまい、日本は、言論弾圧と憲法改正に影響力の大きな広告が街に溢れることでしょう。

    時として、権力のある立場にあるものは、かっこわるい発言をします。自分が権威をかざしているということに気づけません。江戸っ子は、権威に立つ人間が、「でえっきれえ」でした。そして、そうした立場が生み出すような発言を感覚的に嫌います。「宮城の人間に分かりませんよ」と神奈川の人間がいうかっこ悪さとか、居丈高な、それでいて自分の権威を笠に着る態度などです。江戸っ子でなくても、私たちは世間を絶対化しない仏教によって、こうしたことに気づくことができます。

    国民投票法案審議というのは、とてつもなく仏教の生き方に反するものです。平和国家として世界から67年間認められてきた事実を無視し、戦争のできる「普通の国」にしようと今、タカ派の国会議員は進めています。もう、あんな悲惨な戦争という愚行はしないという約束のもとに、日本人自らが作った憲法を、アメリカのお仕着せだという嘘で、金儲けしようとする軍産複合体とそれにつながる権力ある議員や企業の発言、行動に私たち仏教徒は充分に注意しなければならないでしょう。


万木 養二