悪意はないのに、たった一言で相手を知らずに傷つけてしまうことは、日常生活の中でよくあることですよね。先日、新聞で面白い記事を見つけました。それは「夫に言われて傷ついた一言」という何でもランキング(平成19年4月21日 日経新聞)です。これは妻に対する一言ですが、皆さんも1つや2つご経験がありませんか?
第1位「君も太ったね」・第2位「(体調が悪いのに)ごはんはないの?」・第3位「家にいるんだからヒマだろ」・第4位「片付けが下手だ」・第5位「(育児など手伝ってほしいといったら)仕事で疲れているんだ」・第6位「うるさい」・第7位「(話し方について)しつこいな」・第8位「誰のおかげで生活できているのだ」・第9位「で、結論はなに?」第10位「俺のお金を自由に使って何が悪い」・その他「もっと効率よくやれば」・「うちの親に悪口言うな」
このランキングを読んだとき、『弥蘭王問経』(ミリンダ王問経)の一節を思い出しました。ミリンダ王とナーガセーナ長老(那先比丘)との問答の中で、ミリンダ王の『尊者ナーガセーナよ、知っていながら悪い行いをする者と、知らないで悪い行いをする者とでは、どちらが禍いが大きいですか?』という問いに対し長老は次のように答えます。
『大王よ、知らないで悪い行いをする者のほうが、禍いが大きいです』
私たちは普通、知りながら悪いことをする方が罪が重いと思いますが、仏教では知らないで悪いことをする方が罪が重いという所に奥深さを感じます。
阿弥陀さまの真実の光に照らしだされた私の姿は、悪事を重ねてしか生きていくことが出来ない私であります。また善い行いをしたからといってすぐに見返りを求めてしまう私です。もっと言うと知らず知らずに実は、何気ない一言で相手を傷つけてしまっている私であり、その罪こそ計り知れないものかもしれません。携帯電話やメール等、情報交換が迅速になった今、相手に対する言葉がどのように受け止められているのかについて考えてみたいですね。
冒頭の「夫に言われて傷ついた一言」だけではなく「夫に言われてうれしかった一言」をご参考までに。
第1位「おいしいね、ごちそうさま」
第2位「家のご飯が一番おいしい」
第3位「いつもありがとう」
第4位「がんばっているね」
第5位「(夫側の家の行事に参加した後)おつかれさまでした」
第6位「君と結婚してよかった」
第7位「(夫の友達や姑に対して)よくやってくれる」
第8位「えらいとおもうよ」
第9位「実家でゆっくりしておいで」
第10位「今日は一段とかわいいね」
知りながら善い言葉をかける。これは「お世辞」です。言葉って難しいですね。
|
成田 真二郎 |
|
|