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 07.07.16 


節談説教布教大会、盛会裏に開催




  去る7月3日、本願寺築地別院において節談説教布教大会が盛会裏に開催されました。
 私が、数名のご門徒と一緒に築地に到着したのが開会10分前、すでに本堂と第2会場の総会所は満堂。私たちは第3会場の講堂に案内されました。本堂は椅子席、立ち見の方も大勢でした。畳敷きの総会所では午前午後のプログラムを入れ換えて布教が行われました。第3会場の講堂は、プロジェクターで本堂の状況をスクリーンに映し出すという急ごしらえの会場でしたが、ここも見る見るうちに聴衆であふれてしまいました。閉会式のおりに主催者から二千名の参集があったとの報告がありましたが充分うなづけるものでありました。
 主催は節談説教研究会、共催は東京親鸞会。私は,築地別院には所用によりしばしば参りますが、事前にはポスターが数枚貼られているぐらいで宣伝らしい宣伝はされておりませんでした。4月には佛教大学名誉教授の関山和夫先生がNHKラジオで節談の話をされておられました。その効果もあったのでしょうが、スタッフの方々の努力が実ったということなのだと思います。
 節談説教は、過去の記憶。30年近く前に、関山先生の研究の成果を受け、俳優の小沢昭一さんが放浪芸の復活という芸能の視点から取り組むなど、脚光を浴びた次期もありました。しかし、一般にはマニアでもない限り、節談に触れる機会は皆無といってよろしいのではないでしょうか。
 それが、ここまで人を引きつけるその理由はどこにあったのでしょう。
 浄土真宗のお寺ならどこにでもあった高座が使用されなくなってから、すでに5〜60年経ちます。当日の参拝者の年齢層は幅広いものでした。そのなかで、節談に郷愁を感じて築地に足を運んだ人はごく少数だったと想像されます。むしろ、節談という過去に一世を風靡した説教を聞けるということの物珍しさと、また、修練の成果であるプロの話術に憧憬と期待を持って聴聞に訪れた人が多かったのではないかと思います。
 今回の説教でも、話材の古さや、女人往生説などに代表される現代の教学的課題を踏まえることのない説示など、手直しが必要と感じられる部分も多くありました。説教の古典として伝承していくのならそのままでもよろしいのかもしれません。しかし、現代人に対する布教活動である以上、教学と話術の両面から専門的視点をもって、新たな講本を制作することも必須の課題だと思います。
 節談が、寺院の布教の一形態として復活し、一般に認知されるようになるかどうかは未知数ですが、その可能性は充分あると思います。



2007-7-16 
 小林 泰善