仏教ちょっと教えて 




078 お線香は立てない?


Q:お線香は立てないと聞いたのですが…。なぜですか?


A:    はい。「もともとお香は立ててお供えしていなかったからです」というよりも「もともとは立てることが出来なかった」といったほうが正確です。

 お香が日本に伝えられたのは6世紀の中頃といわれています。
 現在のお香の調香技術の基本は鑑真和上が日本に持ち込まれました。
 この頃のお香は「抹香」で、粉末状のものを用いていました。
 はじめに、うずまき状の木の枠に抹香を詰めて型を取り、次に枠を外して「蚊取り線香状態(?)」にし、その抹香の端に火をつけて、長時間香りがでるようにしていたのです。
 これを「香印」といいます。その後、平安時代には「練香(抹香を蜜や梅肉で練り丸めたもの)」、室町時代には「香木(香りのでる木片)」などが用いられるようになりました。
 「お線香」の調香技術は、江戸時代に伝えられたというのが一番有力な説です。

 お寺でのお香の焚き方は、香炉に種火として炭を入れ、その上に抹香をくべます。
 最近は「香炭」というものあるのでロウソクでも簡単に火がつけられるので便利になりました。
 ご家庭では、種火を準備することは大変なのでお線香を種火の代わりとし、抹香をくべる焚き方でもよいとされています。

 お線香だけで供えるとき、お線香を立てると、迷信や祈祷などの様々な意味付けがされてしまい誤解を生みます。
 「隅々まで行き渡る清浄な香りは仏さまのお慈悲の心をあらわす」という本来の意味を大切にするために、お線香は立てずに横にしてお供えしましょう。
 また、興味のある方は種火を使った焚き方にチャレンジしてみてはいかがですか。



回答者: 成田 慶信


  POSTEIOSホームページ目次へ戻る