仏教ちょっと教えて 




091 「お内陣の前卓に描かれている鳥は?」

Q: 本堂のお内陣の机(前卓)に描かれている鳥は何?


A:  極楽浄土には、色とりどりの美しい鳥が飛びまわり、優雅な声で鳴いているとして、鳩摩羅什訳の阿弥陀経には、代表して六鳥(白鵠、孔雀、鸚鵡、舎利、迦陵頻伽、共命之鳥)が説かれております。

 「白鵠(びゃっこう)」は、白いコウノトリだそうです。「孔雀(くじゃく)」はどなたもご存知だと思います。「鸚鵡(おうむ)」はオウムです、ご存知でしょう。
 これらは、今でも見ることが出来ます。しかし、後の3種は実際には、私たちは、見ることが出来ない、お経に示されている想像上の鳥です。
 「舎利(しゃり)」ですが、私は、最初、阿弥陀経に何度も登場されます、舎利弗(しゃりほつ)と何か関係があるのかと思っておりましたが、関係はないようです。
 本願寺の浄土三部経現代語訳版には、黒色で、人間の言葉を暗誦する鳥と説明されています。
 次に、「迦陵頻伽(かりょうびんが)」ですが、頭が人間で体が鳥。殻の中にいる時から美しい声でよく鳴く鳥で、その声は聞く者を飽きさせないとされています。

 そして、次に、最も、有名なのが「共命鳥(ぐみょうちょう)」です。
 この鳥は、一つの身体に頭が二つあるというとても奇妙な鳥です。しかし、この共命鳥(ぐみょうちょう)は、私たちに、さまざまなことをお示し下さり、気づかせて頂く鳥なのです。
 阿弥陀経の中で、説き手であるお釈迦様は、「これらの鳥は、罪の報いとして鳥に生まれたのではなく、阿弥陀如来が法を説きひろめるために、いろいろと形をかえて、あらわされたものにほかならない」と示されています。

 さて、この共命鳥に関して、よくお聞かせ頂く逸話があります。
 ある時、二つある頭の双方が、些細なことで言い争うになりました、それから、憎しみ合うようになり、そして、ついには、相手がいなくなれば、自分は、幸せになれると考えるようになり、相手に毒を飲ませてしまいます。
 しかし、その結果は、共の命と書きますとおり、双方ともに、身を滅ぼしてしまいました。

 これは、正に、私たちの、「自分さえよければいいんだ」という生き方が、実は、自分の身を滅ぼすことにもつながるということをお示し下さっているのです。
 別々に生きているのではなく、私たちはお互い、共命鳥のように、つながった命なのです。
 そうしますと、この一見、奇妙な想像上の鳥の姿が、現実の世界の私の姿をあらわされているとも頂くことが出来るのです。

 お寺の本堂にお参りした際には、正面の大きな机を、御覧になった際には、この六鳥を見つけてみて下さい。そして、自分の日常の姿を振り返ってみてください。



回答者: 法徳寺 伊東 英幸


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