A:
さきごろ、テレビドラマで西遊記が放映されました。孫悟空にSMAPの香取慎吾さん、三蔵法師を深津絵里さんが演じていましたね。私には、堺正章さんと夏目雅子さんの印象が強いですが。
ところで、三蔵法師とは何でしょうか。「法師」ですからお坊さんでしょう。では三蔵とは…。
仏教にはたくさんの典籍(仏典)があります。ひとくちに仏典と言いますが、内容に依りまして大きく3つに分けられます。一つ目は「経」、二つ目は「律」、三つ目が「論」です。
「経」というのは、お釈迦さま直接の説法を文字にしたもので、これを「経蔵」と言います。
「律」というのは、僧侶の生活規則を記したもので、これを「律蔵」と言います。
「論」というのは、仏教教義について解釈や解説を施したもので、これを「論蔵」と言います。
「蔵」とはグループ・集まりといったところでしょうか。例えば「経蔵」は、「経」に分類された仏典の集まり、という事です。
これら「経蔵」、「律蔵」、「論蔵」の三つを総称して「三蔵」と言います。
そして、この「三蔵」に精通した、優れたお坊さんのことを「三蔵法師」と呼んでいるのです。
ですから、三蔵法師と呼ばれるお坊さんは一人ではなく、何人もいらっしゃいます。
西遊記に登場する三蔵法師のモデルとなったのは、玄奘(げんじょう)という方です。 三蔵法師の中でも特に功績が大きかったお坊さんで、三蔵法師の代名詞のようになっています。奈良の薬師寺には、玄奘三蔵求法の旅をテーマにした「大唐西域壁画」が、平山郁夫画伯によって描かれています。
翻って、浄土真宗に縁のある三蔵法師といえば、阿弥陀経を翻訳された、鳩摩羅什(くまらじゅう)という方がいらっしゃいます。阿弥陀経の冒頭には、「姚秦三蔵法師鳩摩羅什奉詔訳」と書かれています。
『姚秦(ようしん)の三蔵法師鳩摩羅什、詔(みことのり)を奉じて訳す』
私たちが日常お勤めするお正信偈にもありますね。七祖のお一人、曇鸞大師を讃える中で、「三蔵流支授浄教 焚焼仙経帰楽邦」と書かれています。ここでの三蔵法師は菩提流支(ぼだいるし)という方です。
『(曇鸞大師は)菩提流支三蔵から浄土の経典を授けられたので、仙経を焼き捨てて浄土の教えに帰依された。/顕浄土真実教行証文類(現代語版)148ページより』
三蔵法師は浄土真宗にとりましても大切な方々でありました。
| |