仏教ちょっと教えて 




109 幽霊は存在するのですか?

Q: 友人が幽霊を見たといっていますが、幽霊は存在するのですか。


A:
 幽霊には三つの特徴があるそうです。「髪が長い」「手を前にたれている」「足がない」の三つです。
 一つ目の「髪が長い」ことは、「昔は良かった」と後ろ髪が引かれることであり、過去へのとらわれです。年輩者が古き良き時代を持ち出し、現在の空白を埋めることがありますが、未来に希望が見出せないと人は古き良き過去を持ち出します。
 二つ目の前垂れの手は、未来への手だてがないこと、希望の喪失です。バンザイ・お手上げという言葉がありますが、バンザイもできないほど、打つ手がないと言うことでしょう。
 三つ目の足がないことは、現実に立脚していないことを示しています。ふらふらと、周りの風に流されるという、大地に足をつけた主体的生き方ができない状態です。この三つの姿で、過去・現在・未来にわたって、希望と安心と喜びがないことが示さているようです。

 存在しないのに実存するように思えるものを幽霊といいます。幽霊という存在が、科学的(客観的)に存在するとしたら、それは幽霊ではなく、正式な固有名詞で呼ばれる存在となります。

 実は幽霊の問題は、いるか、いないかよりも、「思えてしまう」というところにあります。
 数年前、某病院で統合失調症の理解を深めるための機械「バーチャル・ハルシネーション」(患者の幻聴・幻視の疑似体験する機械)を使い、幻聴や幻視の疑似体験をしたことがあります。患者には何が聞こえていて、何がどのように見えているかの体験です。その機械を体験して思ったことは、何か違った声が聞こえるといった程度ではなく、同時に色々な幻聴が渦巻いており、24時間、その幻聴や・幻視が続くとなると、患者の負担は想像を絶します。
 幽霊が見える。猫の妖怪が見える。人のつぶやきが聞こえる。そのことは客観的な事実かどうかではなく、その人にとって見えている。聞こえていることが現実なのです。そんなものはいないと否定したって見えてしまっているのですからしかたありません。「そんなことはない」と安易に否定しないで、見えていることからくる不安や畏れをしっかりと聞いてあげることが大切です。

回答者: 西原 祐治  


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