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「般若心経」は、わずか266文字の経典。でも短さからいえば、浄土真宗の「南無阿弥陀仏」は6文字です。この6文字に阿弥陀仏のすべての願い、働き、功徳が凝縮しています。でも般若心経を読まないのは数だけの問題だけではありません。
お経には二つの系統があります。一つは聖道門といわれる仏の理想と、その理想を実現するための手段が説かれているお経です。そのお経に示されているように私が努力精進していく自力の教えです。もう一つが浄土教といわれる阿弥陀仏の慈しみや豊かさ、働きが説かれ、その慈しみの中に自分を発見していく他力の教えです。
「般若心経」は前者の経典であり、お経の内容は、観音菩薩が、宇宙の本質は『空(くう)』であることを見抜き、すべての苦しみから解放された。その真理を舎利子(しゃりし)に説法され、みんなで一緒に努力して無上の目覚めに到達しようというものです。
ところが親鸞聖人は、自分の日常生活は、無上の目覚めどころか、欲やねたみ、腹立ちが渦巻き、自分へのこだわりから一歩も放れることが凡夫であり、その凡夫が救われていく道は、その凡夫の存在の上に仏と等しい尊厳を見出してくださる如来の智慧と慈悲によることを明らかにしてくださいました。だから浄土真宗では、その阿弥陀仏の功徳や願い、働きを讃えたお経が日常勤行として用いられるのです。
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