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お寺の名前は寺号(じごう)と呼び習わしているので、そのままこの用語を使って説明させていただきます。ちなみに浄土真宗では「〇〇寺」もしくは「〇〇坊」となっています。
寺号の由来ははっきりいえばその寺院の縁起による以外にはわかりませんので、各寺院それぞれの縁起を見るしかありません。 私の個人的な推察ですが、よほどの大寺院であるとか、有力者が開基でない限り、その名前の由来がはっきりしているお寺は少ないような気がします。ちなみに私のお寺もその由来までは書かれていません。
ご本山「本願寺」は親鸞聖人が九十歳の生涯を閉じられた後、末娘の覚信尼さまが中心になりたてられた廟堂に亀山天皇から「久遠実成阿弥陀本願寺」と賜ったということが大きな由来となっているようです。 「本願」とは「仏さまの願い」といえますので、「本願寺」とは「仏さまの願いをきかせていただくところ」と説明させていただいています。
一般寺院の寺号の由来はそれこそ千差万別だと思いますが、寺号の多くはその宗派の依拠する経典などに由来することが多いと思います。 浄土真宗であれば、浄土三部経(仏説無量寿経、仏説観無量寿経、仏説阿弥陀経)という経典があります。同じく浄土宗も時宗も浄土三部経によります。
そこで、浄土真宗の本願寺派(約1万ヶ寺)の寺号を調べてみたところ、
1位 西光寺(150件) 2位 光明寺(140件) 3位 正覚寺(104件)4位 安楽寺(97件) 5位 西教寺(83件)
となりました。
こうして見てみますと、浄土教系の寺院らしい漢字や単語が使われています。 「西」という字は阿弥陀如来の世界は「西方極楽浄土」でありますので寺号には頻繁に出てきます。 「光」もよく使われる字です。阿弥陀如来は「光寿無量の(光と命きわみなき)仏さま」とされています。「光明」も同じくです。 「正覚」とは一般的には「悟り」のことですが、特に浄土真宗においては、仏説無量寿経の中で、阿弥陀仏が法蔵菩薩であった時に衆生済度の四十八の願をたてられ、その四十八願のそれぞれの言葉に、「もし私の願いが成就しなければ、自分は正覚をとらない(=仏とならない)」と述べられています。 「安楽」は「極楽」と同じく「仏国土」「お浄土」のことを意味しています。「西教」とは「西方浄土の教え」のことでしょう。
このほかにも「浄」「信」「真」「念」「誓」「寿」などを使った寺号もみられます。 しかし現在は浄土真宗の寺院でも、その昔は他宗であったというケースはままあります。そういった場合、寺号はその昔、他宗であった時のものをそのまま使っていることもあるので、必ずしもこういった名前のケースに当てはまるとは限りません。
むしろ、現在までの様々なご縁を通して、いま浄土真宗のみ教え、阿弥陀如来のご本尊に手を合わさせていただいているわが身に感謝していきたいと思います。
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