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016   展覧会 99年12月

東京都美術館
「西遊記のシルクロード 三蔵法師の道」展     本多 静芳

 本日、遅ればせながら上野の東京都美術館へ行き、「西遊記のシルクロード 三蔵法師の道」展を鑑賞してきました。
 朝日新聞創刊120周年記念という肝いりで、会場は祝日ということもあり大変な混雑でした。時間は、午後1時すこし過ぎに、入館しました。
 年齢層は、50歳代以降の方々が大きな割合を占めていました。5〜60代が一番目立ったように思います。しかし、大学生以上の20代の若者も結構目立ちました。(このような環境だから目立つのですね)
 厚さが4cm近くもあるカタログ(2300円)から想像されるように、大変多くの出品数でした。ちなみに、目録番号は222番まで打たれており、最後にはアニメ「悟空の大冒険」(手塚作品)やテレビドラマ「西遊記」まで、モニターTVで放映されていました。
 17年間の大紀行の末に、唐の国へ仏教が一僧侶によって伝えられたこと、その営みが僅か1〜2時間の鑑賞を通して知り得てしまうこと、そして玄奘三蔵の営みは決して商業主義や権威主義などに乗ったものでなかったことなど、改めて心を動かされました。(はじめは、国禁を破っての単独走破だったのが、次第に高昌国の王などのパトロンがついたり、通訳がついたりしていき、最後は唐の国王から歓待されるのですが、それでも玄奘の持っていた当初の動機がそのまま晩年の経典翻訳まで続いています。)
 全体は、五つの章に分けられて展示してあり、第一:三蔵法師の足跡をたどって、第二:三蔵法師のめざした聖地インド−仏像と守護神、第三:三蔵法師と大唐王朝の華、第四:長安から奈良へ・遣唐使が伝えた仏教美術、第五:伝説の中の三蔵法師・西遊記の世界、となっておりました。
今回の展示会では、イヤホーンガイド(600円)を借りました。かつては、コーナーごとに電波を受信するタイプのものが一般的でしたが、今回のものはCDプレイヤーとなっており、全部でトラックは50あり、イヤホーンガイドマークのある展示物の前で、そのトラックを再生するという方法になっていました。しかし、展示順に番号がつけられていないことが多く、時々とまどってしまいました。しかし、効果音も入り、そして玄奘の様々な事績、仏伝・教理・歴史などを展示物とは別に紹介してくれるCDは聞き甲斐があります。全部を通して聞くと50分以上になるとの説明でした。
 そして、このCDが展覧会の印象を左右しているのだろうと思いました。というのも、せっかく借りたのだから、聞かなければという思いが湧き、まんべんなく鑑賞しました。しかし、普段だったらじっくり見るものや、すっと通りすぎてしまうものなどの落差が大きいのですが、今回はそういう見方が出来なかったような気がします。
 中国西域から始まり、西北インド、そしてインド仏跡、ヒンドゥーの諸神、遣唐使将来の品々、さらには孫悟空からハヌマーンまで、かなり大風呂敷な展示でしたが、それでもこれだけのものを一度に目にすると改めて玄奘三蔵の存在の大きさが実感として受け止められ、知識としてのみ学ぶこととの違いを再確認しました。
 ところで、最後にアンケートがあったのですが、そこで書き込みながら気づいたのですが、玄奘三蔵の事績については本当に色々なことを通して学んでいるつもりの私にとって、では玄奘三蔵とはどういう人だったのかと問われるとその個性があまりにも希薄なのです。とても、まじめで、意志堅固で、学びの深い人であり、と常識的で薄っぺらな表現の人間像しか出てこないのです。これ、ひとえに私の学びが足りないのですが、それでも、玄奘三蔵を巡る情報の流れ方は、このような印象を与えるようなものではないかと、ふと思いついたのですが、いかがでしょうか。
 あらためて、仏教の教えの流れに身をおけたことの尊さ、ありがたさを実感すると同時に、せめてそれが伝わることを障げないようにしたい、いや、障げていることの自覚を新たにして、学び直しをしたいと思いました。
 






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