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018  原田泰治が描く 日本の童謡・唱歌100選
2000年11月

「原田泰治が描く 日本の童謡・唱歌100選展」
を見て
by いしかわ ちほ


 
 「原田泰治が描く 日本の童謡・唱歌100選展 」を10月7日横浜高島屋ギャラリーに見に行ってきました。原田泰治さんは以前朝日新聞日曜版に連載されていたこともあるのでご存じの方も多いと思います。亀田製菓のパッケージの絵を描いたり絵本を書いたりと多彩な活動をなさっている方です。

 会場には童謡・唱歌が流れ、入った瞬間普通の展覧会とは違った賑やかな雰囲気を感じました。私は母と行ったのですが、見に来ている方の年齢層がかなり高かったのも印象的でした。

 最近は童謡を聴くことも歌うことも少なくなり、若い人の聞くような歌は親の世代にはうるさいものでしかなく、親やお年寄りの聞く歌は若者には心地よくない。一緒に同じ歌を口ずさむ機会など殆ど無くなっていると思います。小さい頃は母と一緒に歌を歌っていたように思います。その歌は流行の歌謡曲ではなくてやはり童謡といわれるものでした。

 会場のそこかしこから歌を口ずさむ声が聞こえ、にこやかな笑顔があふれ、「懐かしいねぇ」「昔はこんな風だったねぇ」という言葉が聞こえてきました。母は私に「この歌知ってる?」と言いながら全曲歌ってくれました。展覧会でこんな事をしたらマナー違反なのでしょうが、会場の雰囲気に思わず二人で楽しんでしまいました。

 童謡や唱歌には、日本の風景が表現されています。だから昔幼かった頃の楽しい思い出や切ない思い出が一杯つまっているのだと思います。そしてこの100枚の絵は原田さんがその歌からイメージした日本の風景が様々に表現されています。絵を見ていて思ったのは、その絵の中に夕方、夕焼け、秋らしい絵、そして背景は山というものが多いことでした。田舎ってこうだな、こういう家あったなと懐かしく思いました。

 いわゆる日本らしさは、今コンクリート全盛の世の中でなかなか感じられる機会がないと思います。それでもたまには道の片隅に咲く草花に気がついてほっとすることがあるでしょう。そんな安らぎや、現代社会のデジタルな生活で忘れてしまい失ってしまいがちな心の潤いや落ちつきやあったかさを、私は原田さんの絵を見て童謡を口ずさむことで少し取り戻せたように思い、にこにこ顔で会場を後にしました。






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