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030 『17才の殺人者』─坊さんの見たロケ日記─
2003年2月

坊さん弁護士・郷田夢栄 『17才の殺人者』
─坊さんの見たロケ日記─


 テレビ東京系で水曜よる8:54〜10:48で放映されている「女と愛とミステリー」シリーズに坊さん弁護士が登場しました。(放映日1月29日)
 主演の萩原健一さんがお寺の副住職で弁護士という設定です。
 ミステリーですので、血なまぐさいシーンもちょっとありますが、仏教の心を芯とした人情味あふれるドラマだったように感じました。

 このドラマのロケは、私が所属しています「正福寺」で行われました。劇中でも何度か寺名の入った石碑などが撮されていました。
 ドラマ自体がフィクションですので、寺名も架空のものが用意されていましたが、監督さん(本願寺派の寺院のご出身)が雰囲気がよい、と気に入って頂いたので使って頂きました。
 ロケは昨年の九月に都合三日間で行われました。
 出演者の何倍ものスタッフが照明・小道具・衣装を持ってあちこちを走り回っていました。
 門徒さんや近所の方もワイワイ集まって興味津々、賑やかな撮影でした。

 主演の萩原さんは、役にドップリとはまる方のようで、強烈な緊張感を生み出していました。
 ウロウロしながら台詞を何度も繰り返しながら本番を待つ姿は近寄りがたいものでした。その役作りを大切にされる姿に、萩原さんの真摯な人柄を感じました。
 対して、高樹澪さんは待ち時間をゆったりと、その場所の空気にとけ込んでゆくしなやかな雰囲気でした。
 置いてあった「築地新報」を眺めたり、寺報を眺めたり、私が通りかかると「この表紙(築地新報)のところへ行ってきたんですよ」と話しかけてくださったり、その結果、二時間ほどインドや私が行ったタイのエイズホスピスの話しを聞いてくださったり、娘と遊んだりしてもらいました。
 しかし、本番になるとさっとその役になりきる姿にはびっくりしました。しかも、撮影が終わると見物の方のサインに応じたり、娘に手を振ってくれたり、人それぞれの魅力が満ちていました。
 「役者は待つことも仕事なんです」皆さんが口をそろえておっしゃっていました。その時間を無駄にすることなくそれぞれの方法で充実した時間を過ごされていたようです。

 ドラマ中の読経も、住職役の加藤武さんと萩原さんで読まれています。
 大原監督の意向でもあったのですが、テープを毎日聴いて練習されたそうです。
 萩原さんは「般若心経なら読めるけど、正信偈は難しい」といいながら、黙々と練習をされていました。

 ドラマを支えるスタッフの方もすばらしい方々でした。
 役者の方の数倍の数のスタッフが、それぞれの持ち場をきちんと支えられて、まとまりのあるチームでした。
 重い機材を担ぎ、ライトの熱に汗をかきながら、次を読みながら準備する。
 自らの存在感をカメラに伝えることなく、黙々とこなされている様子は、本当にカッコイイ姿でした。

 演ずる者と支える者とが一体となって、フィクションの世界に現実の生活空間を描いているのだ、とオンエアーを観ながら感心しきりでした。
 シリーズ化も検討中とか。ワクワクしながら待っています。

 再放送もあるようです。詳しくはテレビ東京のホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/mystery/list.html
でご覧下さい。


by 遠山 章信




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