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037 ベルリンの至宝展 甦る美の聖域
2005年5月
『ベルリンの至宝展 甦る美の聖域』 |
4月中旬土曜日午後、上野の山に行きました。 東京国立博物館の平成館で開催中の『ベルリンの至宝展 甦る美の聖域』(2005年4月5日(火)〜6月12日(日)を鑑賞してきました。 東西ドイツ統一15周年となる 2005年は、「日本におけるドイツ年2005/2006」ということで上記展覧会が開かれています。なお、『世界遺産・ベルリン博物館』とは、ベルリンの5つのミュージアム「旧博物館」、「新博物館」、「旧国立美術館」、「ボーデ博物館」、「ペルガモン博物館」の総称です。本展は、この5つのミュージアムの至宝約160点を一堂に集める展覧会です。 NHK教育の日曜美術館で放映した影響で、『ゴッホ展』は行列が出来ているそうですが、『ベルリンの至宝展』は比較的空いています。 展示内容は、人類が「聖なるもの」をどのように表現してきたかが、編年で先史時代、エジプト、バビロニア、ギリシア、ローマ、イスラーム、ビザンチン、中世欧州、欧州古典、欧州近代の代表作が展示されます。 深淵で豊かな聖なるものを巡る美術、それは人間という営みそのものであったのでしょう。 人間の自覚は、自身の存在の不思議さ、有限性の発見であるといえるのならば、宗教的な営みそのものということではないでしょうか。 ところで、今回の企画展で近代絵画の最後に展示してある作品は何だと思いますか? ある作家、思想家の肖像画ですが、実に明確にこの企画展を位置づける作品です。つまりこの企画展では、人間は聖なるものと共に時代を築いてきたが、近代にそれは「神は死んだ」という言葉で終焉を迎えたというメッセージがあります。 R.シュトラウスも表題音楽として注目したその人とは、シュテーフィング描くところのフリードリヒ・ニーチェです。 果たして「聖なるもの」は亡くなったのか。 もう、私たちはそれに関われないのか。 関わるとしたら丁度墓参するように、その遺蹟を等間隔で並べるmuseum(博物館)という墓地に行くしかないのか。 などなど、様々な問題を提起され、宿題をいただき帰路につきました。 私は、まだまだ美術館という場所に、墓参をしようと思いました。 もっと沢山見て回らねばと思い、平成館から本館、そして東洋館(大谷探検隊将来品の展示があります)を見て、くたくたになりながらも、今の私のいのちを活き活きとさせてくれる深くて豊かなものをお土産に帰りました。 |
by 万木 養二 |
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