本の評・紹介ページ


002   最近興味深く読んだ本 

 今年も早くも4分の1が過ぎました。この3カ月で私が興味深く読んだ本をいくつかご紹介します。法話のネタにどうぞ(順不同)。
  (松本 智量) 


『彩花へ 「生きる力」をありがとう』
山下京子  (河出書房新社)
 酒鬼薔薇事件ではじめに殺された山下彩花さんのおかあさんが娘のいのちと向き合い、娘に導かれるように死を受容していく。柳田邦男氏の名著『犠牲』(文藝春秋刊)と併せて読むとより味わい深い。

『寂しい国の殺人』
村上龍 (シングルカット社)
 酒鬼薔薇事件、援助交際は、近代化を達成してしまった日本で、国家的目標もなく、個人的価値観も持てないからだと説く。大人に覚悟を迫る一文。

『日本人の心のゆくえ』 
河合隼雄 (岩波書店)
 『いまや河合隼雄教出版局となったような岩波書店からまた教祖の本。しかし、これは良い出来の本です。援助交際についての一章は一から十まで正しい。

『洗脳の楽園 ヤマギシ会の悲劇』
米本和広 (洋泉社)
 執着のない人格はおぞましいまでの無責任を生むことをグロテスクに実証したのがヤマギシだった。ヤマギシが「脳に浮かんだユートピア」という指摘は鋭い。執着の害を無邪気に説く仏教者は必読。

 『「Shall weダンス?」アメリカを行く』 
周防正行 (太田出版)
 「Shall weダンス?」をアメリカ人はどう見たか?日米の家族事情に違いはあっても、中高年が抱える心の空白は共通という発見。この人、文章もうまいですね。

『絶対音感』
最相葉月 (小学館)
 世界的にみて日本は絶対音感を持つ子どもの数は非常に多いようです。その反面世界的な音楽家が育っていないのは?音と音楽とが人間に与える影響を探っていく刺激的なレポート。

『語る禅僧』
南直哉 (朝日新聞社)
 最後に一冊だけ仏教書。とにかく文章のうまさにおいては私の見る限り最近の仏教書の中で群を抜いています。日本仏教に欠けている「英語にも訳せるような、われわれにリアルな日本語、そしてその語り口」を目指したという著者の試みは十分に達成されていると思われます。きわめて、まっとう。私はこの著者が所属しているというだけで曹洞宗を見直すことにしました。




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