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 009   DAIMATSUの斜め読みブックガイド99年 5月号

  小説の惹句として使われる『スティーブン・キングを超えた』『日本のクーンツ』 という呼ばれ方に、エンターテインメント作家篠田節子氏が啖呵を切っています。
「とっくに超えとるわ!」

  でもそれが悔しいことに市場が国内に限られているために、同じ土俵での正当な評価 を受けていない。それは、作家にとって不幸である以前に、日本という国にとって不 幸だ。なぜなら、外国に紹介される文化と言えば相変わらず大江健三郎、川端康成、 三島由紀夫などの純文学。その他輸出されるものはいきなりアニメ。それをもって日 本という国を理解してもらおうったってそりゃ無理ってもんじゃないか?

  ジャンルとしては今一番元気で、現代日本社会と現代に生きる日本人の姿を映し出し ている、エンターテインメント小説こそを輸出すべきなんだ、それによって少しは「 日本人の顔」が外国人にも見えてくるのではないか、と篠田氏はおっしゃるのですね 。

  全面的に同意します。その上で、現在ベストセラーを快走中のエンターテインメント を三作、ご紹介。売れているからと言って決して甘く見てはいけません。どれも現代 日本社会を鮮かに撃つ快作。

  
共通した切り口は、
「家族」です。
  (松本 智量) 


『永遠の仔』
天童荒太著  冬幻社刊

  それぞれの事情により四国の療養施設で少年時代を過ごした三人が、十八年後に再会 する。胸の奥底に封印していたその施設での体験が、三人の現在の中で次第に大きな 唸り声とともに立ち上がる・・・

  児童虐待、アダルトチルドレン、痴呆患者の介護といった極めて今日的課題をそれぞ れ深く深く考えながら、人が生きていける力とは何かを問いかけます。

キーワードは「承認」。

『理由』
宮部みゆき著  朝日新聞社刊

  直木賞受賞作。昨年六月発行以来、現在まで書店では平積みが続くロングセラー。 江東区の高級高層マンションの一室から青年男性が転落死する。部屋ではさらに中年 男女、高齢女性の死体が発見された。『一家四人殺し』と報じられたこの事件の顛末 ・・・。

  ミステリーなのであらすじは書きません。現代日本の家族の形を幾層にも重ねあわせ ながらバブル崩壊後の現代社会を浮かび上がらせる宮部氏の職人芸のような作品。篠 田節子氏が言うように、こういう小説の輸出こそが日本理解を進めると思う。

『秘密』
東野圭吾著   文藝春秋刊

  妻と小学校五年生の娘を乗せたスキーバスが崖から転落した。妻は死亡。そして意識 を失っていた娘が目を開いた時・・・娘の意識は妻の意識と入れかわっていた!その 日から、身体は小学生になった妻との奇妙な生活が始まる。小学生だった妻が次第に 成長していき、妻が日々の生活を娘の身代わりでなく自身の第二の人生として送り始 めるにつれ、夫婦の葛藤も大きくなっていく・・・。

  ラストの二ページ。これは泣けます。ヒロスエ主演の映画も楽しみ。








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