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 014   DAIMATSUの斜め読みブックガイド99年 9月号

『あずみ』15巻が発売になりました。
マンガです。小山ゆう作。小学館刊。
江戸時代、徳川体制護持のために殺人兵器として育成された子ども達が、命令遂行(殺人)を重ねていきながら「正義」や「自分の生」の意味するところを読み替えていく物語。極めて殺伐としながら、いとおしく思えるのは何故?

物語の冒頭は、まんま、オウム事件と重ねて読み込んだ人も多かったでしょう。主人公の成長と共に物語は「正義」のありかたを離れて、「私という個人が生きる理由」を問う物語へと変貌していきます。大河漫画の風格も備えだして。これ、このまま行ったら『カムイ伝』を超えるかもしれない。
 

入江紀子『のら』(マンガです)がまたまた出版社を変えて出ました。
ちなみに最初は竹書房、二回目は小学館、今度はアスペクト(アスキー)ね。

出版社を三回も変えながら出版されるということは、ま、売れない訳です、一般的には。しかし、出版社に近い筋(つまり読み手のプロ)に強固なファンが存在するということであるわけで。

のら、というのは、正体不明の女の子。彼女がふらりと関わった先のごたごたが・・・というお話。
これはもうネタばらししてもいいと思うんだけど、この物語では「のら」は単なる狂言回しであって・・・

『「弱者」とはだれか』小浜逸郎著、PHP新書。

いわゆる新保守(という呼ばれ方を本人は嫌がるだろうなー。そういうレッテル貼りという作業こそを嫌っている人ですので)の論客です。

タイトルから十分想像できるそのままの内容です。いまや「弱者」という看板を背負う者こそが、現実には最大の強者なのではないか、それは「弱者」の弱者たる所以を克服する上で大きなハードルとなってしまってはいないか、それは弱者(と規定される人)にとっても強者(と目される人)にとっても不幸なことではないか、というのが本書の出発点。
とまとめてしまうのは乱暴ですが、目次の中から例えば『「弱者」聖化を超克するには』なんて項をあげると、あれ、と思いませんかか。

「差別」を現場で考える時、テキストとして使えます。
「弱者」の話題をふったら連想してしまったのが、
『自虐の詩(上)(下)』
。業田良家著、竹書房文庫。これもマンガです。

いわゆる「自虐史観」の話ではありません。身も蓋もなく言ってしまうと今問題になっているドメスティックバイオレンス(DV)そのものの話なわけで、これをもってDV一般を「愛情の一形態」などと片づけるようになってしまったらとんでもないことです。しかしこのマンガは「弱者」自身、あるいは「弱者」同志による「自虐」の闇を描ききったと言うのは過言としても大傑作であるとは断言しておきましょう。
これを読んで泣かなかったあなたは本当の「強者」だ。でも泣いたからといって彼女が抱える闇と輝きを理解したとは限らないぞ。
☆『自虐の詩』を出したら、もう一つ出さずにはいられない。

『ぼくんち』西原理恵子著、小学館刊。またまたマンガです。

黙って、読んで、泣きなさい。 
『自虐の詩』を出したら、もう一つ出さずにはいられない。

『ぼくんち』西原理恵子著、小学館刊。またまたマンガです。

黙って、読んで、泣きなさい。 
  (松本 智量) 




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