本の評・紹介ページ


0045 本紹介


「死」と「孤独」をテーマの真ん中に据えた作品群。

いずれも現代マンガ表現の見事な到達。


 『ザ・ワールド・イズ・マイン(全14巻)』新井英樹著 小学館(2001.6刊)

世に現れたこと自体に驚愕すべき傑作。
若者二人がただただ破壊的な殺人を重ねていく。同時進行で謎の巨大生物が人を町を殲滅していく。絵もストーリーも登場人物の台詞もすべてが過剰。一読目は嫌悪感にせかされるように一気に読んだ。二読目はかなり印象が変わる。アクの強さはいささかも減じていないけれども。
マンガ以外では絶対に表現できない世界。完結してからまだ1年経っていないのに、第5巻は出版社にも品切です。どういうことですか。



『MONSTER(全18巻)』浦沢直樹著 小学館(2002.2刊)
殺人現場に残された瀕死の双子の命を天才外科医が救った時、漆黒の闇が外界に放たれた。自らの孤独を世界のスタンダードであることを主張するかのように青年の前では人の関係が次々と殺人によって断ち切られていく。
作品の最大のキーワードは「名前」。人間の存在と尊厳を名前に凝縮させるというアイデアは、浄土真宗に生きるものにはあまりにも頷けてしまうのですが、どこから得たのか。
名作。それにしても『明日のジョー』に比肩するこのラストはいったいいつごろから用意されていたのだろう。恐るべし、浦沢直樹。続刊中の『二十世紀少年』(小学館)とともに、この作家が同時代にいてくれたことの幸福を思う。



『ア○ス』しりあがり寿著 ソフトマジック(2002.1刊)
ここで展開されている狂気に、そして孤独に、いつかの記憶が呼び起こされた。痛い。



『富士山』さそうあきら著 小学館(2002.2刊)
静謐にして苛烈(帯コピーより)。まさに。
死の真横である者は、安息しある者は蘇る。さそうあきら、ここまできたか、と溜息。でもどこまでいくのとは聞かない。どうでもいいですが、一作品中でバカ坊主が正信偈を読んでいます。


松本 智量
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