本の評・紹介ページ


0052 書籍の紹介 by 伊東 昌彦


『浄土真宗入門』
(『Ocean:An Introduction to Jodo-Shinshu Buddhism in America』の日本語訳)
ケネス・田中著 1997年


  歴史の中で仏教は大きな役目を節々で果たしてきた。大伽藍が立ち並ぶ京都奈良、そして鎌倉を訪れれば、誰しも畏敬の念を懐かずにはいれないであろう。しかし、一度そこから立ち去れば、潮が引くようにその思いも消えていってしまう。

  仏教は現代にも確実に存在する。しかし、宗教や教義、教団といった言葉からは閉鎖性を感じざるを得ない。現代人にとって、気軽さや即効性がないからなのか。伽藍を見上げたときのような大波は押し寄せてこない。心に届かなければ、仏の教えも歴史を彩る背景になってしまうだろう。

  『真宗入門』(原題『Ocean』)を著されたケネス田中師は、「まずは、対話を通して互いの理解から始めなければなりません。」と言う。どんなことでも、相手の心に届かせるには相互理解が大切である。特に、師が布教されたアメリカにおいては、日本のように仏教の下地もなく、まさに心と心の繋がり一つであった。Q&Aという一方通行でない形を選ばれたのも、その思いが反映されている。そして、何よりも師の前向きな姿勢とさわやかな口調が、我々の心をほぐしてくれるのである。そこには閉ざされた大門はなく、どこまでもカリフォルニアの心地よい日差しが注がれている。

  海を渡った親鸞の教え。是非一度、体験して頂きたい。

 
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