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0056 本の評・紹介


『ジェンダーイコールな仏教をめざして
[続女たちの如是我聞]』

(女性と仏教東海・関東ネットワーク編)
2004
朱鷺書房



 「ジェンダーイコール」、平たく言えば男女平等を指し、「男女共同参画」へ通じる概念である。世間では「男女共同参画」へのバックラッシュ(反動)が喧しい。その大方は「ジェンダーフリー」を「性別をなくすこと」と短絡化したり、極一部の事例をもって文化の破壊だとする自身の思い込みに陥った批判に過ぎないものであり、それらへの対応も過渡期には避けられない論議には違いない。

 だが、本書『ジェンダーイコールな仏教をめざして[続女たちの如是我聞]』に多く披露される仏教界の具体相は、過渡期にまでもいたっていないという現実を明らかにする(これはいつぞやのモダン/ポストモダン論争を思い出す)。バックラッシュが起こる程度には浸透した「男女共同参画」の感覚を持って僧侶と結婚をした女性たちは、(建前では出家を標榜する)寺院世界が世間以上に世間的迷いが渦巻くこと、そして仏教教理と現実とのあからさまな乖離に困惑を隠せない。忍従に甘んじることをよしとしない彼女たちは、ある者は宗派の条例や制度の改正に尽力し、ある者は檀信徒とのネットワークによる刷新をめざし、そしてある者は教団外から仏教者へエールを送る。彼女たちの主張や実践は決して教理を盾に取った正論ではなく、仏教回復の営みそのものに他ならないのだ。男性僧侶にとっては耳の痛い部分も多々ある。しかしそれも単なる現場批判ではない、現場と仏教への信頼と期待に裏打ちされていることが十分に伝わり不快ではない。

 昨年東京教区の研修会にお呼びした川橋範子さんや瀬野美佐さんが中心となって編まれ、教団外からはアーユスの枝木事務局員も一篇を寄せている。特に浄土真宗の者にとっては他宗派の事情や現場(一般寺院)の取り組みなど具体的な事例に富み、益は多いだろう。ぜひ一読をお薦めする。

松本 智量  
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