ポストエイオス会員の石上和敬氏(港区光明寺住職、東大印哲卒・同大学院修士、武蔵野大学仏教文化研究所研究員)が、大著『バシャムのインド百科』山喜房佛書林を(日野紹運、金沢篤、水野善文の各氏との)共著のかたちで翻訳出版されました。 500頁を超える書で、原題は“The Wonder That Was India”といい、インドの歴史と文化を論じた古典的名著であり、インドでは何度もリプリント版が出ているそうです。
約50年前、ロンドン滞在中のバシャム博士(1914−86、インド生まれ)の緒言によれば、「本書は、ある程度の興味をもちながらも予備知識のない西洋の一般読者に対して古代インド文明を解説するもの」となっています。
50年も前のインド紹介の図書ですが、当初、中村元先生、奈良康明先生の強い推薦によって企画されながらも、諸般の事情で今日に至り、10年の歳月を要して出版されました。
その内容は、多種多様な文献・資料が引用され、しかも的確さや説得力は現代においても十分通ずるものと「あとがき」に示されています。 多くの写真や図版が添えられており、また巻末の索引は、様々な関心を持つ読者にとても重宝なものだと思われます。
四名の訳者による労作ですが、石上氏は巻頭から第五章の途中までをご担当です。分量からすると全体の三分の一以上を訳されているのではないかと思われます。石上氏の学びの背景に、このような翻訳作業という実に丹念な精神的営みのあることを知り、改めて敬意と賞賛を表さずにはおれません。
ただ、本書は、大著の上、膨大な引用文献が紹介されているので、四名の訳語の統一が十分ではないようです。しかし、そこにこの著が紹介しようとするインドの深さや大きさを読者が感じて頂ければと思いました。
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