最近出版された本を二冊ご紹介します。
一冊目は、私たち浄土真宗本願寺派のご門主・大谷光真様の本です。
『世のなか安穏なれ 現代社会と仏教』
大谷光真著
中央公論社、1260円(税込)
この本には、2005年に立命館大学の特別講座でご門主が講演された内容や、その時に受講生から寄せられた質問にお応えになったもの、さらには雑誌に寄稿された原稿などが納められています。
本のサブタイトルに「現代社会と仏教」とあるように、混迷を深める現代社会における宗教や仏教の役割について、浄土真宗の立場からご自身のお考えを率直に述べられている他、多岐にわたる質問にも懇切丁寧に応えられています。また、東京でご次男の下宿先を探されたおりに、「宗教はお断り」の但し書きのある部屋があり、「実は私のうちは寺なのですが」と言ったところ、不動産屋さんに「お寺は大丈夫です」と言われたことなど身近なエピソードをまじえて分かりやすく述べられています。これまで仏教や浄土真宗にご縁のなかった方にもとても読みやすく、示唆に富む内容となっておりますので、ぜひご一読されることをお勧めいたします。
<目次>
第1章 現代社会と宗教
第2章 宗教とは何か
第3章 仏教とは何か
第4章 戦争と平和、政治
第5章 現代社会の問題にどう応えるか
第6章 現代日本における宗教の役割
第7章 日本人の心のありようを考える
第8章 宗教は戦争を止められるか
二冊目は新しく創刊された雑誌(季刊発行)です。
『ジッポウ』(2007春、創刊号)
ダイヤモンド社、1500円(税込)
この本は、浄土真宗本願寺派が設立した中間法人・仏教総合研究所の編集協力によりダイヤモンド社が発行するものです。これまでの浄土真宗関係の本といえば、本願寺出版社や仏教専門の出版社が発行することがほとんどで、その販路も限られていました。そこで、親鸞聖人750回大遠忌(2011〜2012年)に向けて、より多くの人に読んでいただき、少しでも浄土真宗にご縁を結んでいただきたいとの願いから、上記のように大手出版社から発行される運びとなったようです。
内容としては、「こころのクオリティ・オブ・マガジン」とうたっているように、浄土真宗の教えを全面に出すのではなく、こころの問題〜生きるとはどういうことなのか、人生とは〜を中心に考えていく内容となっています。
創刊号には、浄土真宗本願寺派門主・大谷光真氏とウシオ電機会長・牛尾治朗氏の対談や、南こうせつ氏・立松和平氏などのインタビューの他、森永卓郎氏・森達也氏・高史明氏など著名人が執筆されています。読み応えのある内容となっているうえ、一般書店でも簡単に手に入りますので、ぜひご一読ください。
ちなみに、タイトルの『ジッポウ』とは、「十方」すなわち東・西・南・北(四方)、東南・東北・西南・西北(四維)、に上・下を加えた十の方角のことで、あらゆる方角、場所を意味します。阿弥陀如来の本願には「十方衆生」(あらゆる世界の生きとし生けるもの)をすくうと誓われているところから、ちなんだものでしょう。
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