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0070 本の評・紹介




『ホームレス中学生』
 田村 裕 著  ワニブックス



  私はいつから感謝の薄い人間になってしまったのだろう・・・。

 本書は吉本のお笑い芸人麒麟の田村裕氏の自叙伝である。  ご存知の方も多いとは思うが、彼は中学生2年生の1学期の終業式の日にわが家を失ってしまう。
 中学生にしてホームレスとなりその年の夏休みを公園で生活することになったのである。1979年生まれの彼であるので、今から15年ほど前のことである。

 この時代にそんな数奇な経験をした中学生が彼以外にもいたのであろうか・・・?
 家を失ってしまったというその詳しい経緯はさておき、ほとんど「ありえない」彼のサバイバルな話が“今となっては”笑える話として語られる前半部分は実はプロローグにすぎないのであります。

 後半はまさに「私はいつから感謝の薄い人間になってしまったのだろう」と反省させられるほどに、彼の苦しい経験の中からの気づきや彼を支えてくれた人々に対する言葉が、私たちに感動を運んでくれます。

 この数奇な少年が今のお笑い芸人の道を歩んでいる姿のうちには、彼がかかわったすべてての人間に対する「ありがとう」「感謝」のパワーであふれていたのです。
 つまりそれは人間としてのごくごく基本的な、しかし現代の多くの人間がもしかしたら失いかけてしまっている生きるためのエネルギーがわれわれの中にあったことを知らせてくれたものでした。

 この本が世に出てくれたことに感謝いたします。至福の3時間でした。


紹介者:竹柴 俊徳  
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