『いのち、見えるとき』
本多静芳著 (法蔵館、2002年) |
本書には、大学で仏教学を担当する著者が講義内外で学生と対話する模様がたびた
び描かれる。 仏教に偏見こそあっても仏教が何を教えているかを知らない学生たち
は、自分が知らずに数多くの思い込みの中に生きていることに著者との対話の中で目
を開かれていく。
行間から感じる著者のまなざしの温かさは、学生との対話の空間にあふれるぬくも
りなのであろう。その温かさに誘われて、日常に潜む根深い差別や靖国問題などの社
会問題への視点も無理なく導かれる。
本書は二部構成となっており、一部「お寺へ行こう〜親鸞仏教入門」は寺や仏教と
自分とは縁も関係もないと思い込んでいる人を対象とした見開き二ページごとの読み
切りコラム、二部「なされたことを知る〜報恩講の意義」は大学生向けの講演録。い
ずれも仏教用語や教義の説明はほとんどなく、著者自身の聞法録であり、「私がいか
に真実にそむいているかということに気づかされた表白」である。
著者の肉声が躍る本書は「親鸞仏教入門」とあるが、親鸞や浄土真宗の垣根を超え
て、広く仏教を知りたい人々の益となるはずだ。 すでに思考が十分に固くなっている
老若男女に薦めたい。
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松本 智量 |
POSTEIOS研究会 |
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