任期満了による宗会議員の選挙が、僧侶議員は投票日4月20日、門徒議員は22日に行われた。僧侶議員については31選挙区(分区により実質34選挙区)のうち選挙の実施された選挙区は11選挙区(分区により実質13選挙区)で、他の20選挙区は無投票だった。
数字と実態は必ずしも一致するものではないが、宗会が本当に民主的に選ばれた選良の集まりなのかどうか首をかしげたくもなる。
今回、改正された選挙制度による初めての選挙であったが、宗門の選挙制度にはまだ問題が沢山あると思われる。特に僧侶議員の選挙制度について、その疑問点を一有権者の視点から指摘させていただきたいと思う。
1.投票制度の改善の余地はないのか
1)投票所の問題
組ごとに投票所を設けることは、すでに時代後れではないか。時代はインターネットの利用など、投票所管理に神経を使わなくてもよい時代になりつつあると思われる。本人確認の方法も進歩してきた。選挙の不正をなくすために選挙規程によって厳しい規制を行い運用してきた歴史は評価すべきと思う。しかし、投票制度を簡素化することによって、より明るく正しい宗会選挙を目指すことを考える時がきていると思われる。
現制度では、組長・副組長・相談員は、宗務員の立場から「選挙運動の禁止該当者」となっている。投票管理者が「選挙運動の禁止該当者」となることは、選挙の公正中立を守るうえからは当然である。したがって現在各組に必ず3〜5名の選挙運動の禁止該当者がいるということになる。東京教区の場合、24組約420ヵ寺あるなかで103名が該当する。4ヵ寺あれば必ずその中に1人は該当者がいる計算になる。僧侶数が寺院数の3倍と計算しても、有権者の1割近くが該当者である。
選挙が消耗戦になればなるほど、選挙違反や選挙妨害を起こしてはならないと、おのずと厳しい規制が働くことになる。民主的な選挙の現場は、民主的でなければならないのは当然のことである。ところが、実態は管理社会になりかねない状況があるということではなかろうか。
卑近な例をあげて申し訳ないが、今回当ポストエイオス研究会会員には、立候補者が複数居り、組長・副組長・相談員にいたっては多数存在する。当然のことながら、その活動にはブレーキがかかってしまうのである。宗門内マスコミを目指す立場としては、全国の宗会議員候補者の選挙公約を収集し投票日前の公開を目標に準備を進めたのであるが、今回も叶わなかった。
是非とも検討していただきたいことは、投票制度を簡素化することにより、末端宗務員である組の役職者を「選挙運動の禁止該当者」から開放していただきたい。そうすれば、より自由闊達な選挙活動が可能になるのではないかと思う。
2)郵便投票の問題
郵便投票の制度は、厳しいものである。しかし、今回から郵便投票出願の「正当な理由」があることの証明が、組長の証明で許可になる項目が増えた。規制が少しは緩和されたということである。しかし反面、組長は投票管理者のうえに証明書発行者という責任を負うことになり、ますます「選挙運動の禁止該当者」としての要件が重くなってしまった。
郵便投票の厳しい制度は、不正投票の防止を目的とするものと思われる。しかし、現実には、有権者の投票の自由を著しく束縛する結果になっている。今年度から僧侶の現住所制度も施行されたことであり、もう、公職選挙で行われている不在者投票を適用してもよろしいのではないだろうか。投票日に投票所へ行くことができない場合には、本人確認さえできれば、事前の投票を許可するようにすべきだろう。
2.なぜ、選挙の日程を、公示日まで有権者に知らせないのか。
今回任期満了の選挙であるにもかかわらず、選挙の日程は公示日まで、公式に通知されることはなかった。年度末から年度始めにわたっての選挙であることは確実視されていたが、組や教区などの通常行事の日程調整に現場は大変苦労をしたのである。宗務員の立場としては規程を遵守するのは当然ということになるのだろうが、そうまでして厳密に運用しなければならない理由が理解できない。むしろ、総局が選挙日程を選挙戦略で利用していると勘繰られても仕方がないのではなかろうか。
現実に、教区に日程確認をしても回答が得られなかったため、組会の開催通知後に、急遽日程変更をせざるを得なかった組もある。
3.任期満了後に選挙が行われる理由はなにか。
ごく単純な疑問なのであるが、選挙は前任者の任期中に実施しても支障はないのではなかろうか。むしろよりスムーズな新体制への移行が行えると思うのだが。宗務の空白期間が、制度によってあえて作られていることの理由がわからない。
4.立会演説会の義務化すべきではないのか。
今回から、投票日から17日以内に、候補者または推薦者から申請があった場合、もしくは地方選管が必要と認めた場合に立会演説会を開催することができることになった。すなわち、立候補者の中からひとりでも開催申請があれば開催するということである。その申請の有無は、有権者が候補者の資質を判断する重要な要素にもなりうる。
ある選挙区では、立会演説会が行われなかったとのことである。
この制度は、運用の仕方で、立会演説会開催の義務化ができる制度でもあることを周知する必要があることと思う。
また、立会演説会の方法だが、ヤジや質問を禁止するのは一方の支持者の恣意的な活動を禁止する意味で理解できる。しかし、言いっぱなしの形態では選挙公報もあるので立会演説会をする意味が薄らいでしまう。せめて候補者同士の討論をするべきと思う。その場合、1回ではなく、同日でもよいから複数回実施する(双方反論の機会を持つ)ことが理想だと思う。
現在本山では、無投票の議員が力があるとの認識があるとの噂も聞く。しかし、選挙という手続を経ないで選出された議員にどれだけの力があるのか、むしろ疑問である。
5.中選挙区と小選挙区の共存は不公平ではないのか。
今回、北海道と東京で一選挙区を分区して初めての選挙が実施された。東京では南北の選挙区相互の情報がまったく遮断され、同一教区でありながら、教区が分断されたかのようであった。立会演説会に至っては、築地別院で同日に時間をずらして行われたが選挙区が異なると会場に入ることも許されなかった。
中選挙区と小選挙区は、双方にメリットもデメリットもあると思う。ただ、全国的には中選挙区と小選挙区が混在することに不公平はないのだろうか。また、小選挙区は教区の意向を取り入れることなく線引きがされたため、上意により教区が分断されたように感じられ、違和感を覚えた有権者が多かったことは間違いない。
6.宗門の選挙規程の運用の姿勢についての要望。
選挙規程は、選挙で不正が行われることなく、有権者が民主的に議員を選ぶことができるように運用されるべき。ところが、立候補者を保護(ボロが見えないように)するような運用がなされているのではないかとの疑念を持つことがある。選ばれる側よりも、選ぶ側を尊重する運用がなされなければ公正な選挙は成り立たないのではなか。
特に候補者の政見に関する論議や広報が、抑制されるような運用がなされてはならないと思う。そのような観点からも、現制度で「選挙運動の禁止該当者」のあり方には問題があると言わざるを得ない。
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群生海 2005.5.1 |
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