1.唐突すぎた宗門特別推薦
今年になって、与党が、宗教法人を公益法人の範疇から外す具体的な動きを始めました。税収不足から宗教法人に課税をする動きとして法改正が立案されたのです。宗教法人への課税は、収益にこだわりの少ない普通の宗教法人ほどダメージを受けます。納税のために営業努力をしなければ法人の維持ができなくなったとしたら、宗教の本来の姿は失われてしまいます。
そのことに対する危機感から、宗門が政治に関わらなければならないと強く意識し、今回の参議院議員選挙にあたって、宗門特別推薦という新しい制度が施行されたということであります。
しかし、宗門の人々がそのことを知るのは選挙が始まってからです。
私たちが、政治を常に意識していなければならないことは当然のことであり、総局には、包括法人としてその責任があることも否定しません。しかし、総局に強い危機感があったとしても、宗門が政治とどのように関わるかとの論議をまったく経ることなく、いきなり選挙に関わるこの度の決定は、あまりにも唐突すぎたのではないでしょうか。
2.宗門の機能を読み誤った
今回、選挙が近づくにつれて、宗門特別推薦の意味が明らかになり、宗門内に動揺が広がりました。それは、宗門が推薦をするだけでなく選挙運動もするということが明らかになったからです。しかし、我が宗門は創価学会のような選挙のための機能は持ち合わせていません。選挙運動に関わっている僧侶は稀です。むしろ、門徒組織を維持していくために、選挙には努めて関わらないようにしているのが普通です。したがって、通常では寺という組織が選挙に関わることはまずないといっても過言ではないでしょう。僧侶個人の投票行動と寺という組織は別であるという姿勢です。
そこで、目標15万票集めろと言われても、どうにもならないのが現実。門徒の多くはすでに地元で別の選挙組織に所属しているのですから、住職としては、つらいものがあります。本山や教区、組の法要や法座に門徒を動員するのとわけが違います。大遠忌懇志の進納より困難な目標だったのです。今回の結果は、その現実から考えるとむしろ上出来だったと考えられます。
本来、寺院が組織票という政治機能を持つことと、念仏の道場としての機能はまったく別物です。
したがって、総局は、宗門組織の機能を読み誤ったといえます。
藤谷光信氏には、今後宗門代表の国会議員として頑張っていただかなければならないことであります。しかし、今回の選挙で、なぜ藤谷氏が宗門代表として全国区である比例区候補として選出されたのかは、ついに不明のままでありました。
今までの宗門推薦と同じように、推薦依頼があればほぼ認めてきたあり方を踏襲したとすればあり方としては一応納得できます。しかし、今後、住職が参院比例区で立候補した場合、党派を問わず、また何人候補者がでてもこのたびと同じような選挙運動を展開するのでしょうか。
宗門特別推薦選挙の是非については、宗会であらためて論議していただかなければならないことではないでしょうか。
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