本山での親鸞聖人750回大遠忌法要が円成し、ご門主は、ご満座のご消息において、本年4月1日から宗門の体制が改められ時代に即応した新たな営みが始まることを宣言している。
しかし、宗会の改正審議はいまだその途上だ。新しい体制の姿は、全く見えてこない。
現在、宗会では委員会を開催し、宗法改正に伴う下部法規の制定について協議が続けられているとのことである。協議は10月から断続的に続けられているのだが、その内容については非公開であり、一般寺院住職にとって、協議の経緯どころかその法案すら知ることができない。宗門の将来を決定づける法案の審議が密室で審議されているかのような観がある。
これを異常な状態であると言わずに、どのような表現をしたら良いかわからない。
今回の改正の柱の一つである首都圏特区構想についても、当該区域の住職も全くカヤの外でありそのイメージすら描くこともできない状況である。今回の宗法改正にあたり、当該地区に対する事情および意見の聴取は全くなされていない。都市開教の実体に対する調査検証も皆無の中で改正が行われるといっても言い過ぎではないだろう。
昨年2月に都市開教が停滞している状況を憂える都市開教重点地域出身の本部員により、提言書(注@)が首都圏都市開教対策本部長あて提出されたが、本部員会議で協議されることもなく現在に至っている。都市開教対策本部が思うように機能できていないことは、東京教区の僧侶も心配しているのだ。
ところが、『中外日報』11月10日号には、東京教区の既存寺院が都市開教の障壁となっているとし、その障壁をクリアするための特区構想と断定している。(注A)予断と偏見に基づく記事としか言いようがないが、これが東京教区に対する平均的な認識水準なのだろう。
都市開教が進まない第1の原因は、生涯を首都圏開教に捧げる意欲を持つ人材が少ないということにつきる。ようするに人材不足である。実績が上がらないのを東京教区のせいにされては困る。あり得ないことと思うが、予断と偏見による認識の元で法改正が行われるとしたら、「改正」ではなく「改悪」である。運用を誤れば、直轄寺院である築地本願寺の未来は暗いものとなるだろう。
2月はじめには臨時宗会が開かれ、改正宗法は議決され、4月1日から施行されることになると思われるが、我々の心配が杞憂に終わることを期待したい。
今回の法改正は宗門の将来にとって重要なものであることは周知のことだ。ご門主は、ご消息の中で、宗門の組織が社会の変化に応じて変わる必要があると述べられている。情報の公開、明朗な会計は、時代の要請である。我が宗門の現実は、時代に逆行しているような気がするのは思い過ごしだろうか。宗門が、時代から取り残されてしまうのではないか、はなはだ危惧されるところである。
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2012.02.01 無憂樹
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注A
11月10日付の『中外日報』「本願寺派第299回定宗質問戦要旨C」の記事。首都圏特区構想について、「新たに寺院を建立した場合は、当該地域の組に所属することが必要だが、ライバル≠フ出現を快く思わない組内寺院の抵抗などで新寺建立が思うように進まない事情があり、この障壁≠クリアするために打ち出されたのが特区構想だ」とある。
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