今月の法話


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更新日 2001/10/01

「8mmフィルム」

    番組出演者が専門家にレクチャーを受けて、視聴者から依頼のあったものをなおすという「思い出 直します」というTV番組をみました。それは、30年前に父親が兄妹の成長を撮った8mmフィルムがあり、子どもの頃家族そろっての上映会が一番の楽しみだったという。そして15年程前に映したとき8mmフィルムが映写機に絡まり、8mmフィルムを送って映すためにあけられた重要な小さな穴の部分が破損してしまった。それ以来その8mmフィルムをなおさないまま、父親も3年前に亡くなりそのままになってしまったという。一番簡単な修理の仕方は、破損したフィルムの部分を切り捨てて前後をつなぐというやり方がある。しかし、父親が撮ってくれた大切な思いでを一コマでも捨てることができない。結局透明の新しい8mmフィルムを薄く削って貼り付け修理をする事が出来た。いよいよ15年ぶりの上映会が始まった。妹さんの誕生から1ヶ月目のお宮参りにはじまり、原っぱで遊ぶ兄妹そして七五三までが成長の記録として編集されていた。亡き父親が撮ってくれた子供たちの姿だった。しかし、フィルムには続きがあった。若々しい父と母が兄妹を抱き上げ笑っている。家族の幸せがいっぱいにあふれていた。今は会うことの出来ない父親の大切な思い出が遺された家族みんなに戻ってきた一瞬だった。8mmフィルムを撮った父親のたくさんの思いが今家族みんなに届けられた。

    浄土真宗を開かれた親鸞さまは、「阿弥陀さまが苦しみ悩む人たちを必ず救うとお約束してくださったのは、苦しみ悩む人たちを見捨てることが出来ないほおっておくことが出来ないからです。そして、どんな人も無条件にたすけるという慈しみの心、力を持っていてくださいます」と教えてくださいました。子供は親の願いの中に育っていきます。親の願いを知らずに過ごして、親が亡くなってはじめて気づくこともあります。いずれにしてもその願いに気づいたとき本当の幸せを感じます。私は今、阿弥陀さまという親さまに抱かれています。休むことない絶えることないその願いの中に生かされているのです。

如来の作願をたづぬれば
苦悩の有情をすてずして
回向を首としたまひて
大悲心をば成就せり

親鸞聖人作・正像末和讃より

有賀 良雄  

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