法 話 

  いのちの歴史

  ここのところ「黒磯北中事件」をはじめ、ショッキングな少年犯罪が多発しており、マスコミ、教育界などで、犯罪防止の議論が盛んに行われています。そして、出てきた結論の一つとして、教育の中に「いのち」の大切さを指導しなければならないことがあげられています。


  作家の永六輔さんが、授業に「生命教育」を設けることを提唱し、面白い視点で「いのち」について語っています。そこでは、人間のいのちの長さは誕生から死ぬまでではなく、年齢に地球の歴史、つまり35〜40億年をプラスしたものであるとしています。例えば、年齢15歳であれば、本当の年齢は35億15歳になるわけです。この「いのち」は、35億という途轍もなく長い「いのちの歴史」を背負っているのです。


  生まれ変わり死に変わり脈々と伝わってきた「いのち」、その一つ一つのどれが欠けても今の私はないのです。その一つ一つが如何に尊いものであるかが分かります。そして、今を生きるすべての生きとし生けるものに35億年の「いのちの歴史」があるのです。


  親鸞聖人に、「弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずれば、ひとえに親鸞一人がためなりけり」という有名なお言葉があります。35億年の「いのちの歴史」の一つ一つに阿弥陀さまの熱い思いがかけられているのです。そして、今を生きる私にも!


  「いのちの歴史」の重さと個々の尊さに気づくとき、阿弥陀さまのお働きの広大無辺なることをあらためて知らされます。そして、平等のお慈悲に包まれていることを知らされてこそ、私たちは、今なにが大切かを真に考えていくことができることと思います。

大中明英 


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