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トーナメントの取材に行ったら、その晩は必ずネオン街も取材するというのが、我々ふたりの過酷な使命であります。 ですから、フジサンケイクラシックで訪れた伊東でも、夜は当然あちらこちらをふらふらし、出会った店が『ラテン・クォーター』というフィリピンパブ。渡辺は少々腰が引けていたのですが大原は「日比友好!民間外交だ!」と、一人のろしを上げている始末。 しかし、中に入ってみると、美しいフィリピン女性の心を奪ったのは渡辺のほう。というのも、渡辺には、似顔絵を描いてあげるという必殺技があったのです。3人、4人と席に就いたフィリピーナは、大原にはまったく目もくれず、「キャ!美人にかけた!ワタナベさん、すてき!」とか、「つぎは私もかいて!ワタナベさん、おねが い!」と、おおはしゃぎ。 これで割り勘とはひどすぎる!という大原の叫びも、伊東の夜空に虚しく吸い込まれて行ったのであります。 |
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ところでよく日、もう一度伊東の街を歩いていると、なんときのうのフィリピーナが、それも渡辺大原両者がいちばん気に入ったナンバーワンのかわいい子が、彼氏と思しき若者の腕にぶら下がるようにして、にこにこと歩いているではありませんか。 いくら似顔絵で点数稼いでも、本命はほかにいたんだねと、精一杯の皮肉を言う大原に、それでもモテないよりいいじゃんと言い返す渡辺。でも、どちらの声にも、もう一つ力がこもっていなかったのは言うまでもありません。 その日から伊東の夜の取材はぱったりと中止し、昼間の川奈に命を懸けたおかげで、のちに「千里」川奈編は未曾有の充実ぶりを発揮することになったのであります。 |
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