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宙組 1998年10月30日〜12月20日 宝塚大劇場
脚本・演出 ミヒャエル・クンツェ/潤色・演出 小池 修一郎

VISAジャパンミュージカル
エリザベート〜愛と死の輪舞〜
CAST
トート 姿月 あさと ルドルフ(皇太子) 朝海 ひかる
エリザベート 花總 まり ルドルフ(少年時代) 初嶺 まよ
フランツ・ヨーゼフ 和央 ようか マックス公爵(エリザベートの父) 星原 美紗緒
ルイジ・ルキーニ 湖月 わたる ルドヴィカ公爵婦人(エリザベートの母) 高 ひずる
皇太后ゾフィー 出雲 綾 ヴィンディッシュ嬢(精神病患者) 陵 あきの

この作品には思い入れ度大きい人が多く、がいろいろな人の思い入れを耳にしつつ、期待度60、不安度40の、ちょっと遅い目の観劇となりました。

何といっても名作だよ。この一言に尽きますね。
迫力ある音楽。緊迫感のあるストーリー。大劇場に生える豪華さ…いいねぇ
私自身、そんなにこの作品に思い入れを持っていたつもりはなかったのですが(曲にはありますが)、幕が開いた瞬間。この空気〜って勝手に胸が高鳴るのを感じてびっくりしてしまいましたもの。 感動を体が覚えている、そんな感覚でしたね。

ずんちゃん(姿月)のトート閣下。
ずんトートは全体的にハードでストレート。私が想像していたのとはちょっと違いましたね。っていうか、 想像できなかったんですよ。
直球勝負っという感じ。最初の出の存在感はちょっと弱いなあなんて思いながらみていたのですが、 声という武器を使ってぐいぐい押されて行きましたね。
あの歌声。勢いのある歌声が劇場全体を飲み込んでしまうというすごさを感じました。 (でもあんなにボリュームびんびんに上げる必要はないんじゃないかなぁ。耳痛い^^;>音響さん)
エリザベートに拒絶されてからは、エリザベートを愛するというよりも 復讐しているんじゃないか…手に入れたいものは手に入れてやる、拒むものは許さないっ ていうストレートな欲望を強く感じました。ドアの外でみせた悔しそうな顔にずんちゃんトートの原点を みたような気がします。
でも悲しいけれど酔うということはできなかった…^^;;。
初演の一路さん、再演のマリコさんと、比べてみてしまうのは仕方がないこと…でも、一路君にはなかった リズム感(踊りはちょいと重そうだけれどね^^;)と大きさ、マリコさんにはない素晴らしい歌唱力がある にもかかわらず、やはり匂うような妖しさという点がかなり物足りなかったんです。 これは個人的好みがありますけどね。
トートという役でなければ、十分に魅力的でかっこよかったと思うのだけれど、なにせトートですから・・・ 力ずくで奪うのなら、最初の段階で殺してしまえばいい…エリザベートがずっと見守ってくれた、と そこに行かなければならないような気持ちにさせる麻薬みたいなエッセンスがもう少し欲しかった気がする。
人間とは違う空間で生きるものの特殊性みたいなものを感じさせるには、ずんちゃんの健康的な魅力が 邪魔なのかもしれない。
無表情で通すトートも良いけれど、ラスト大階段を降りる時にみせた笑顔が、幕が降りた後ものすごく まぶたに残って、今のところまだ、あの笑顔に勝るものはないって思ったのは私だけかしら…

はなちゃんのエリザベートは、もう絶品ですね。あの美しさは初演の時に保証済みだし、 それに加え、この数年でつちかった感情の幅と安定した歌唱、色あせない新鮮さ…何も言うことはないでしょう。
何度見てもあの白いドレスで登場するシーンは、息を呑みます。美しい〜(^^ゞ。 この先、再演されてどんなに素晴らしいエリザベートが誕生しても、 エリザベート役者としての条件をこれだけ備えている人は出てこないだろうと思ってしまいましたね。

たかちゃんのフランツは、似合ってましたね。
この間の公演では、なかなか思い切った役作りでびっくりさせてくれましたけれど、 今回の方がいいねぇ〜。おだやかで、最後までエリザベートに、どんどん離れていくエリザベートの 気持ちをどうすることもできず、待つことしかできない…かっこいい役ではありませんが…
歌声もまろやかで、少々貫禄のないところが^^;、マザコン皇帝にぴったり、机の前にちょんと座って いる様子がかわいかった…。そして軍服姿は美しい〜\(^o^)/。後半も味があって…。どうやら今回歌声 にちょいと惚れて帰ってきたようです。

わたる君のルキーニ。配役聞いたときに一番心配だったの…ごめんねぇ。でも、予想以上によくやっていたと思います。 あとはもう少し、大勢の中にいる時の存在感が増すといいんじゃないかなぁ。
あごひげ似合ってましたしね…^^;。こんな役ができるとは思いませんでしたって言ったら失礼かしら… (役者としてはともかくこういうのが似合ってうれしいものなんでしょうかねぇ。 女性としては…歴代のルキーニに聞いてみたい(笑))

ルドルフ、子ルドルフにの方については、大劇場でちゃんと歌っているのを確認したの初めてですよね。 大抜擢だったのかしら…。線の細いかんじがあっていたように思います。歌もそこそこ歌えてたし。
ずんちゃんが大きいせいか、二人が難なく子供に見えるぞー。こんなとこでもずんちゃんの偉大さを 確認したりして…(笑)。でも、そんなに小さくないよねぇ朝海さんって…??。

ヴィンディッシュ譲の陵あきのちゃん。なんか凄みが増して怖かったぁ。目なんか完全によっちゃってて… 確か前も同じ役していたと思うけれど…怪演でっす。
わりと、適役ってかんじの配役だなぁと思っていた中で、マデレーネのゆらさん(夏河)だけは…なんでゆらさんがやっているのだろう…と失礼ながら思ってしまいました。
人魚のかっこの出はすごくインパクトあってよかったんだけれど、踊り出すと…。全然色気感じられなくて、フランツがよろめいていくのが理解できないぞって思いました。配役を聞いた時は、 いいかなって思っただけに少々残念でした。

みなさんおっしゃるが…この公演の一番の不満といえば…最後のデュエットダンスですね。 なんで…(~_~メ)いきなりジャズになるの?? 何を意図してこうなったのか…他の組との違いを出すため??なら完全に蛇足だと思いますね。 完全に違う世界にいっちゃったら意味ないと思いますよぉ〜

宙組ってやはりまだ、他の組の人の集まりにしか見られないので、無意識の内に出演者の顔を確認するたびに 居心地悪い気分が残る…仕方がないことかもしれないけれど…。
宝塚の組体制の浸透性みたいなものをつくづく感じる最近です。

まだまだ再演されそうな雰囲気のエリザベート。これだけ宝塚にマッチしていて、お客さんも普段の 公演以上にはいるのだから、仕方がないことなのでしょう。ただ、あまり安っぽくしないでほしいなと 言うのがせめてもの願いだなぁ。

1998/12/20