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雪組 1998年10月9日〜10月19日 宝塚バウホール
作・演出 荻田 浩一/作曲・編曲 高橋 城

バウ・ミュージカル
凍てついた明日ボニー&クライド
CAST
クライド・バロウ 香寿 たつき エンマ・パーカー(ボニーの母親) 矢代 鴻
ボニー・パーカー 月影 瞳 カミー・バロウ(クライドの母親) 京 三紗
ジェレミー・メイヴィン 安蘭 けい アニス(クライドの元恋人) 貴咲 美里
テッド・ヒントン 楓 沙樹 ビリー(ジェレミーの恋人) 紺野 まひる
レイモンド・ハミルトン 汐美 真帆 メアリー(レイモンドの妻) 森央 かずみ

観劇してからだいぶたって日本青年館公演さえも終了している今、感想を書こうとしている私(遅いよねぇ)。 記憶はやっぱり鮮明じゃなくなりつつありますが、それでも強烈なインパクトのある作品でした。 月組公演とコンビでみた日には頭の回路がショートしそうだった(^^ゞ。
ただ、良かったの一言ですませられない、心の奥の方が震える舞台でした。

セピア色の風景、乾いた土地を想像させるハーモニカの音色・・・
予感、この舞台絶対私好みだぁ〜ってそんな予感がした。 流れる歌がなにかを訴えているようで、合間にボニーとクライドのことをぼつぼつ語る人たち。
誰もが、悲しそう・・・

切ない物語でした。何がきっかけで死に急いだでしまったのか・・・
あまりにも似ている二人が出会ってしまったから加速がついてしまった・・・ そんな気がします。
何かを考えてしまった。何かを求めてしまった。そのために入ってしまう袋小路。ただなんとなく 一日を過ごすよりも意味のある人生だっただろうけれど、悲しいのはその゛何か゛が漠然としすぎていたこと。
最後には「何もなかったの最初から・・・」「逃げなくていいものから逃げていたのかもしれない」と気付いた 二人でもその時は、もう遅すぎた。
愛している、その言葉が二人のすがすがしい笑顔が後に残ります。悲しい結末のせめてもの救い・・・
ラストにこれがなきゃ怒ってるかも・・・(^^ゞ。

荻田先生。私はこの人だれだろぉ〜って^^;思ってた。ぜんぜん知らなかったんですよねぇ。前作も 同じような繊細な舞台だったそうで、正直見逃したって思います。

クライドはアニスを、ボニーはロイを思い切れないでいる。客観的にみちゃうとなんでそこまで執着するの?? って思う。ただ、一番幸せだったと感じた時間の面影を二人に求めて、 その理想から逃れなれないでいただけなのかもしれない・・・
目の前にいる人を心から愛することができれば乾いた心が満たされるかもしれないと思いつつ、 愛せない…なぐさめるように身を寄せ合う二人。
何に反応して涙がでるのかよく分からないが、とにかく涙が止らなかった・・・

出演者は豪華です。この間の大劇場ではどこにいたのかなぁ、みなさん・・・(^_^;)。そろって芸達者。 バウ公演の特性からして、どこかで思い切った配役をしてしまってもよかったかも・・・ 見ている方は落ち着いてみれるのでよいけどね。

タータン(香寿)のバウをみるのは久しぶり。初バウの公演(お髭つけたお顔が渋かったぁ〜)だからすんごく前だぁ〜。 大劇場では何度もみているが、あまり印象に残ることはなかった。でも今回はよかったよぉ〜。 惚れなおしたかなぁ(^^ゞ。 相手役さんを包み込む包容力に関してはピカ一じゃないでしょうか。
アニスを後から抱きしめるシーン最高。キューンときました。 始終淡々と明るい口調。物語が進むに連れ段々その口調のかえって辛くなる。 今更、ほんと今更なんだけれど、何をやっても上手いなぁこの人。 ふところの大きな役をこれからも見たいものです。

ボニーのグンちゃん(月影)、最初はやたら大袈裟な手振りの使い方にすごい違和感を感じながら 見ていたのだけれど、段々ボニーが悪ぶっている・・・投げやりになっていることの象徴のように思えてきた。
オペラピンクのスーツがすごく決まって、かっこよかった。クライド達と強盗を楽しんでいる感じと 大切に育てられてきたという感じがはまったって感じ。最後の「私達、負け犬だよねぇ〜」っていう 吹っ切った表情すごく綺麗だった。

ジェミニーのとうこちゃん(安蘭)。彼はもしかすると一番かわいそうだったのじゃないかなぁ。 あの後どのようにして生きていったのかすごく心配になってしまう。 裏切られたという気持ちと、裏切ってしまったという気持ちその二つの思いをどう処理していくのだろう。
すれた少年というには、もっている雰囲気が落ち着きすぎのような 気がしたけれど、この間のイカロスよりもこういう人間くさーい役の方が私は好きみたい。
軟らかい歌声が、舞台全体に響くとなんとも言えない雰囲気につつまれる。幕開きとラスト近くの歌は 効果抜群でしたね。
それでも、すごくいいなぁって聞いていて、 その後タータンが出てきて歌い始めるとうわぁ〜むっちゃうま〜って、あらためて思ってしまうタータンの 歌ってものすごいわ^^;。

テッドはクライドとコインの表裏。台詞の中に「もしかしたら自分がクライドだったかもしれない」 ってあるが、クライドがこうなってしまったことに対してどこか後ろめたさを感じているように見えた。 かげりのある深い瞳が印象深いです。

レイモンドの汐美君。プログラム見た時付けまつげバリバリで・・・どうしようかと思ったけど(^_^;)。 舞台はよかったっす。メアリー共々一歩間違えば、ただのうるいさいキャラになってしまいそうだが、 やりすぎないところが気持ちよかった。
だいだい、日本人のアメリカ人のイメージってこんな感じでっしょ。(クライドみたくグチグチ やんないよ〜)
動きが大きくて綺麗なんですこの方(体も大きいよねぇ)。肩から腕にかけての線が・・・自然でいい。 まりこさん(麻路)みたい…

アニスは、なんだか実態があるようなないように突然出てきて「愛してます」を連呼する(^^ゞ。 (やっぱりクラウドの回想の中だったのかな、この辺よく分からなかった) 綺麗な声だなぁって改めて思うと同時に、表現悪いけれど「しんきくさい」女性がよく似合うと・・・
愛しているなら、ついて行くか、それができないなら未練がましく「愛しているなんて叫ぶなぁ〜」と 思いながらみてたの私(笑)。
タータンと絵になるなぁって・・・このままいけば・・・なんでしょうか??
ほっとさせるといえば、紺野まひるちゃん。ジェイモンドが好きーって感じそれだけだったけれど、 かわいかった。ただ、お化粧のせいか口元の癖が気になったなぁ〜。

ボニーが「ママに会いたい」って言い出し、家に戻ってくるシーンには、さまざまな考えが交錯する。 クライドの母親は、「生き続けることが大切。生きる意味なんて考えてはダメ、かっこをつけちゃだめ」と諭す。 そして、ボニーの母親は「逃げつづけるだけの人生なんて…」と二人を責めます。
母親としての生きていて欲しいという同じ願いを、シビさんと京さんが対照的に表現しています。この深さは 専科の方ならでの味わいですね。家族の愛の深さをちょっと考えさせられてしまいました。

どの人物も、言葉とうらはらな気持ちの部分がしっかりと書かれていて、繊細な印象の舞台っていうのは この辺からくるのかなぁと思いました。
ダンスナンバーも不自然じゃなく、随所に組み込まれて、これまたかっこよかった。背広姿でのダンスシーン なんてキャー☆って感じ^^;。
これを書いている最中に荻田先生の大劇場初演出の話が耳に入ってきた。なかなか期待度大ですわ\(^o^)/ 。
しっかし舞台とは直接関係ないけれど、この作品のプログラムにトロピカルな衣装の写真使うのはどうかと… 思いません??←小姑みたいね私。

1998/11/06