雪組 2001年4月28日〜5月7日 宝塚バウホール
作・演出 中村 暁/作曲・編曲 西村 耕次/監修 柴田 侑宏
アレクセイ・ヴィロンスキー伯爵 | 朝海 ひかる | コンスタンチン・レ−ヴイン | 立樹 遥 |
アンナ・カレーニナ | 紺野 まひる | セルブホスコイ | 音月 桂 |
アレクセイ・カレーニン | 貴城 けい | ベッツィ・ヴェルスコイ公爵夫人 | 美穂 圭子 |
ヴィロンスキー伯爵夫人 | 藤 京子 | キティ | 舞咲 りん |
スティーバ | 美郷 真也 | セリョージャ | 山科 愛 |
ドリィ | 森央 かずみ | アンヌシカ | 灯 奈美 |
文学作品をオーソドックスに真正面から取り組んだ・・そんな舞台。少し暗い目の照明と、 自在に動く柱が数本、その使い方が見事に舞台を演じていて、おまけに ライトの入り方が綺麗でうっとり・・それだけでなんだかこの舞台の 世界に入っていけそうないい気がした。(一番に流れてきた曲が 「Oh〜〜人事」のCMの曲?で、一人で受けてたんですが一気に集中できました^^;)
幕開きは、社交場のパーティー。晩餐のメニューにみたてて、ちょっと
皮肉った表現での人物紹介。おもわずクスっと笑ってしまう。
そして、2人の出会い・・と自殺した女性のむくろ・・
「死を考えるほど人を愛せるなんて・・・」のような台詞があとあとまでひびいてく・・
偶然の出会いなのか、運命の出会いなのか・・・一目会ったその時にビビッときちゃったんでしょねぇ・・・
しかし、その瞬間を・・・、舞台後方で見詰め合うふたりを・・
前方で立っている警官だか市民なんだかが邪魔して。見逃してしまった(;O;)。
そのせいかはわからないけれど、なーんとなくあっさりしと感じて、
ヴィロンスキー伯爵がアンナのいるところに出没して、アンナもそれを心待ちにしていた
っていうのがどうも実感として伝わってこなくて・・・。
ちょっと首かしげてる気持ちが、カレーニンとアンナの夫婦の会話のシーンで一挙に動き出した。
一言がほしかったんでしょうねぇ・・一言、妻としてではなく女性として大切にしてもらっている
という言葉が・・。ヴィロンスキー伯爵に惹かれている自分を自覚していたからこそ・・
自分の気持ちを止めてくれる確かなブレーキが・・。
でも、カレーニンは、自覚してなかったんでしょうね、きっと。妻だからとかアンナだからとかって。
だって彼にとっちゃぁ妻=アンナだったんでしょうから。
一瞬の沈黙のあと迷ったように言った台詞が致命的になるとも・・・(T_T)。
・・ここでふたりが丁寧に書かれているからその後とても心が入っていきやすい。
そして、押し殺していた思いがあふれでるかのように伯爵への思いを
隠そうとしなくなったアンナ・・・。そんなアンナを見て子供が「今日のママ綺麗・・」って。ここってなんだかなぁ・・・(T_T)。まぁたセリョージャがかわいい(^^)v。(ほんと上手いですよねぇ・・・子役・・)
そして、競馬のシーン。
ヴィロンスキー伯爵を必死で応援する姿を横で呆然と見るカレーニン。「自分の知らないアンナがいる」と
歌う姿は痛々しい。ここのかしげ(貴城)ちゃんがパァーと広がるような歌声で・・圧倒される。
ここのシーンは出色の出来なんじゃないだろうか。
ヴィロンスキー伯爵の落馬・・・。が決定打!!アンナの心はヴィロンスキー伯爵の元に・・・(笑)
2幕は、話の展開がはやいぃ・・・しゃーないけど
2人は一緒に住んでいつの間にか子供が
生まれて・・・アンナは瀕死^_^;(この子供のことって全然話にからんでこなかったんだよなぁ・・)
瀕死の床でカレーニンに謝罪するアンナ。。ここでうるっと来たっちゅぅに・・・
元気になったらまた2人でイタリアに行っちまったさ。
そのまま、イタリアで仲良く元気に暮らしてればよかったのかも(そのぐらいの根性入れなきゃ、
かけおちなんぞ出来ないと思う自分が怖い^^;)しれないが、
またロシアに帰ってきてしまう。
そして、アンナの精神が弱ってく・・・
ドラマチックな展開?の割には低いテンションで進んで行ったように感じるたのは
主役のふたりの持ち味もあるだろうが、1幕で、
ヴィロンスキー伯爵の心情にイマイチ乗り切れないものがあったからかもしれない。
2幕で語られる、彼の背景にある物語をもう少し早く知りたかったような気がする。
初主役のコムちゃん(朝海)は、軍服姿がとっても綺麗でうっとりする。
生真面目な雰囲気と、まだどこか不安定な部分がヴィロンスキー伯爵の心の
弱さと重なってたまらない人もいただろねぇ。。。
個人的には、瀕死のアンナがカレーニンに誤っている横で呆然と立ちつくす姿がなんかすごーく印象に残っている。
この人はどうするんだろぉ(ああなっちゃったら、居場所ないもの)・・とものすごくかわいそうになっちまったもの。
全体的に何がどうってわけじゃないけれど、もう少し空気を大きく動かしてほしい・・・大芝居して欲しいってことじゃなくて、
踊っている時は大きくみえるもの。
まひるちゃんのアンナは、全体的に押さえ気味だった。彼女の持ち味からしてやりすぎると
ただヒステリックになりそうなんでよかったのかなと思う。
その落ち着いた中で時折見せる感情のヒダに私ははっとさせられていいなぁって思った。
イタリアに行っちゃうのもね、なんだかなぁ〜〜って思うけど、
別れムードの沈んだ表情がイタリアって聞いたとたんに、ぱぁって明るくなって表情みたら、
しゃーないって思ってしまう。
この舞台って、伯爵か、アンナか、カレーニンか、先にどこに気持ちが動くか、
惚れちまうかで感じ方違ってくるかもしれないなぁ〜〜
死の前にした狂気もよかったと・・そこに行くまでにたくさんの悶々とした毎日があっただろうし、
駅にも毎日のように行っていたのだろう(推測ですがね)。その部分を演じているのも
みたかったなぁ・・と思う。
コールの時のお辞儀はもうね・・女王様然としてて(笑)うっとりした(^^ゞ。
かしげちゃんはヒット飛ばしましたねぇ・・・。こういう役が似合うとはちょっと意外
でしたがかなりダンディでよかったです。
最初は声を無理やり下げて話しているのが少し気になるぐらいか・・・
、
意地とかプライドをどこかにしまいこんだカレーニンはむっちゃいい男
。ちょっと出来すぎだけど、かしげちゃんのソフトなイメージと重なって、
嫌味なくみてられる。
台詞と台詞の間に心が感じられて、
アンナを見つめる目とか、雪の公園で子供を見る目とか、とおーい目に涙誘われた(;O;)。
コンスタンチンとキティの恋はとっても微笑ましい。いいよね、こういうのが・・・(笑)
コンスタンチンのしいちゃん(立樹)は、見事に?素朴な青年で、自分もキティに
振られたっちゅうのに、落ち込んでいるキティにドア越しに優しい言葉をかけて花を置いていく
姿にゃぁ。。。不覚にも涙がっ^^;。
キティちゃんも綺麗な声だった。化粧の仕方でもっとかわいく見えるようになるような気がする。
音月桂ちゃんは、コムちゃんの同僚でライバル。同僚という設定はちょっとつらかったなぁ・・若く見える コムちゃんが大人にみえた・・・(笑) 若さはちきれてるんだもん。伯爵とは反対にエリートコースを歩く彼。未来が明るそうで前しかみてない雰囲気が 役にはあっていたね。締めの台詞は、ちゃんと含みが感じられて好印象。
ヴィロンスキー伯爵夫人の藤さんは華やかでおおらかで好きだわぁ(^^)、スティーバのまりこ(美郷)さんは手堅く・・しかし、スティーバってば、「彼女は私に似ている・・・」って何度も言うから・・なんか預言者のように思えた。
ベッツィ・ヴェルスコイ公爵夫人のはなんだか腹に一物ありって感じがちょっと怖い(笑)
汽車の中で日記を読むっていうラストシーンはとっても幻想的。
アンナの歌声で、気持ちが高揚して・・幕っていう終わり方もとても素敵だったなぁ・・。
前回見た「マノン」も同じ愛しすぎた故の破滅。
しかし、あちらはかなり動物的な感情で動いていたのに対して、アンナの物語はみんなが常識をどこか頭の中にちらつかせながら、
それでも、押えられないで行ってしまった部分が見ていてつらかった。
こういう物語がベストセラーになっちゃったり、未だに文学作品として伝えられていくのは
、社会っていつの時代もどこか抑圧されたものの中で、
「死を選べるほどの恋」を馬鹿にしながらあこがれているからかもしないなぁ〜〜と
見ながら考えてましたっ^^;
2001/09/06