高校教科書の中のイスラム

 中学の教科書に続いて、高校の教科書を検証してみよう。いまや、大半の日本人が高校以上の教育課程を修了しているので、ここに取り上げられている内容をかなりの日本人が知識として持っていると見なすことが出来る。「世界史B」という科目を某出版社の教科書を例に取り検証していこう。

 教科書本文は全部で約350ページ、その中に、イスラムに関する記述は、イスラムの発祥とイスラムを取り扱ったものが15ページ、トルコとイラン、ムガール帝国、オスマン帝国を取り扱ったものが10ページの計25ページである。比率にすれば約7パーセントである。我が国の立地がイスラム諸国から遠く離れていることと、西洋の影響が大きい我が国においてはいたし方のないことであろう。同様に、中国やインドといったアジアの文明拠点地域も比率としては大きくないのも気に掛かるところではある。それでも以前の世界史の教科書よりは改善されているのかもしれない。

教科書に登場する用語とその説明 ・・・イスラム世界のさわりのみ(約5ページ分)

用語 説明部分
預言者ムハンマド クライシュ族の商人
唯一の神アッラーの啓示を受けた預言者であると自覚
イスラム教 ユダヤ教やキリスト教の影響
厳格な一神教
聖戦の概念
カリフ体制
イクター制
イスラム文明
ヒジュラ(聖遷) 少数の信者を率いてマディーナに移住
イスラム暦はこの年の初年を紀元元年1月1日とする太陰暦。
アッラー イスラム以前からメッカの人々によって神々の至上神として信仰されていた
カーバ ムハンマドはムスリム戦士を率いてメッカを征服し、多神教の神殿であったものをイスラムの聖殿とした
コーラン ムハンマドに下された啓示の集成。
アラビア語で記されている。
イスラム 教義・・・アッラーへの絶対的服従(イスラム)。
おきて・・・信仰だけでなく、世俗の生活のすべてを規制。
∴・・・・イスラムはたんに宗教であるばかりでなく、政治的・社会的・文化的活動のすべてにわたる信者の生活の体系。
正統カリフ
ウマイヤ朝 アラブ人は帝国の支配者集団で特権を持つ。
地租と人頭税は征服地の先住民だけに課せられ、たとえ入信しても免除されることはなかった。
トゥール・ポアティエ間の戦い
地租(ハラージュ)
人頭税(ジズヤ)
新改宗者(マワーリー)
アッバース朝 イスラム教徒ならばアラブ人以外でも人頭税の免除。
征服地に土地をもつものはアラブ人でも地租が課せられる。
カリフの政治はイスラム法に基づいて実施されたのが特徴。
第2代カリフ マンスール バグダードの建設
ハールーン=アッラシード アッバース朝の黄金時代。
ファーティマ朝 10世紀の初めチュニジアに建国。
969年エジプトを征服し首都カイロを建設。
シーア派の中でも過激な一派。
建国当初からカリフの称号を用いた。
ブワイフ朝 イラン人の軍事政権。
946年バグダード入城。
カリフからイスラム法を実施する権限を与えられる。
・・・・・・・・・・・以下省略

イスラムホームページ管理人の感想

 ★歴史の教科書であるから、イスラムがどういう宗教かを説明する必要はないかもしれないが、イスラムの教義、イスラム法に関してはほとんど触れていない。歴史をざっと簡単に触れているだけである。

  ★『聖戦の概念で領土を広げた』、『ムスリム戦士を率いてメッカを征服』という表現は、事実とはすこしニュアンスが違う。この表現だとムスリムは好戦的な集団と理解してしまいそうである。聖戦とは、自分の宗教と民族を外敵から守るために行う防衛の戦いであるので、こういう表現は間違っている。次の、メッカ征服は、通常『メッカ無血征服』と呼んでいる。メッカ住民は無抵抗でメッカをイスラムへ開け渡しているのである。また、メッカ住民のかなりの数のものが既にイスラムへ改宗していたことからも、その時点ではマディーナのイスラム国家とメッカのクライシュ族が全くの敵対関係にあったとは言い切りにくいところもある。

 ★日本の高校生はイスラムに関する知識はほとんど持っていない。多少のイスラムの教義説明があってもいいのではないだろうか。現在の世界の人口の5分の1がイスラム教徒であるという事実に照らしても、今後、日本人が国際感覚を身に付けるために知っておかねばならない宗教だと思う。それも日本に存在する宗教とは全く質を異にしている宗教だけに、なおさら学習する必要があるのではなかろうか。

(( 戻る ))