RALLY Quizzy 33

2001.6.17

ゴール 平塚市総合公園

参加台数 2輪

2台

2名

4輪

28台

67名

総 勢

69名

優 勝

小関夫妻チーム


パノラマ写真

軽い(160k)けど画像荒し

綺麗だけどデータ重し(1.4M 要気合い)

まずまず画質で、中データ(640k)

エントラント走馬燈


プロローグ

 波が来ない。

 こうしてぷかぷか浮いて、もう3時間にはなる。周りの波乗り仲間も、波が来ないなという顔をしている。さっきまで朝靄に煙っていた江の島が今は右手にくっきりと見えてきた。昨日の天気予報じゃ、もうとっくにご機嫌な波が来てもいいはずなのに、肩すかしかな。

 あの日もそうだった。
 ちょうど1年前、季節外れの低気圧に手応えは十分だった。来るはずだった。波は確実に来るはずだった。
 
 鎌倉で始まる絵画展に、彼女と見に行く約束をすっぽかして、浜に来たあの日。雨戸のカタカタと言う音で起こされてビッグウェーブの予感に、あわててボードを積んで家を飛びだした。
 
 今考えると約束を破ったのは俺が悪かったけれど、あの時はサーファーが美術館と波のどちらを取るかといえば決まっていた。
 何の迷いもなく、彼女には後で謝ればいいと思っていた。サーファーを好きになったんだから、しかたがない。ぐらいにしか考えていなかった。
 
 でも、波は来なかった。今日みたいに、今来るだろう、今来るだろうと2時間も3時間も波にゆられていたけれど、昼まで待っても来なかった。

 陸に上がって彼女の携帯に電話をしたけれど繋がらない。「只今この電話は、電話の繋がらないところか...」虚しいアナウンスだけが耳に残った。

 晩に電話をしても繋がらなかった。来る日も、来る日も電話は繋がらなかった。せめて言い訳だけでも聞いてほしかった。でも10日目に出た彼女は無言だった。色々話したいことがあったけれど、思いが言葉にならなかった。気まずい時間が流れた。いたたまれなくなり、全てが終わった様な気がしてそっと受話器を置いた。
 
 なにもやる気が起こらずに、結局去年は波に乗るどころか、ボードにも触らなかった。見るに見かねた仲間が今日は絶好の波が来るからと半ば強引に引っ張り出されたのに波は来ない。

 ここからの景色は一見1年前と何も変わっていないけれど、よく見ると鵠沼プールガーデンのすべり台が水色から濃い青に塗り替えられていたり、ビーチサイドに新しいサーフショップができていた。
 
 「波乗りジョニー」なんて呼ばれていい気になって、寝ても覚めても海のことばかリだった。彼女とのデートも風の無い日か、日が暮れてからばかり。

 今ごろ彼女は何をしているだろう。今更俺の出る幕じゃないだろうし、いい女だから、もうとっくに新しい彼氏を見つけてるだろうな。
 波は来ないし、彼女もいない。俺はいったい何をやっているんだろう。
 
 そう言えば、さっき仲間の知りあいが「サザンな湘南」とか言うイベントをやると言ってたな。車でやるオリエンテーリングか、彼女を誘ってみようか。
 こうして考えこんでも俺らしくないし、ここらでけじめをつけよう。断わられても、もともとじゃないか。それですっきりするなら、お互いのためだ。いや、断られてすっきりするなら、俺のためだな。

 
1年ぶりの電話

 携帯の番号は変わっていないだろうか。もうあれから1年経つんだ。俺がプレゼントしたauのモトローラなんて捨てちゃったかもしれないな。今時メールも着信相手も表示されない時代遅れの端末だもんな。かといって家の電話で、あの怖いお父さんが出たんじゃ、目も当てられないしな。

 1年ぶりなのに、番号は覚えていた。何と言おうか散々迷った。何も言わずに切られたらとか、新しい彼氏がいたらと思うと、ダイヤルする手がちょっと震えた。

 5コール、6コール、7コール。出てくれと言う気持ちと、出ない方が気が楽だという気持ちが交錯してわずか10秒が10分や10日にも感じられた。
 8コール、呼び出し音が止まった。「もしもし」聞きなれた声。
 声にならなかった。喉がからからに乾いて声にならなかった。それでも俺からの電話だと分かり「ジョニーね」と言ったが、黙ってしまった。

 それからどんな風にラリーに誘ったのかは、まるで覚えていない。頭が真っ白になって気がついたら電話を切っていた。ただはっきりしているのは、一緒にラリーに出てくれると言う返事をもらった事だけだった。

ドライバーズミーティング

 スタート地点には既に仲間たちが来ていた。見渡すが、まだ彼女は来ていないようだ。胸が高鳴るのが自分でも分かる。初めてデートした時より、どきどきしている。
 みんな知ってか陽気に振舞おうとしているのが嬉しかった。ドライバーズミーティングまで後10分。急に、もしかしたら、彼女は来ないのではと不安になってきた。
 
 1年前、俺が彼女の約束をすっぽかした様に、彼女も俺との約束をすっぽかしても不思議じゃないという思いが頭の中を支配してきた。ぼーっとそんなことを考えていると、ジョニーと誰かの呼ぶ声に我に返った。遠くに彼女の姿があった。

 一年ぶりに見る彼女は、ちっとも変わっていなかった。ポニーテールのその髪型も、大きな水玉のワンピースに白いパンプスも、そのしぐさも何も変わっていない気がした。

 俺に気がついて、小さく手を振っている。俺も振り返すがぎこちない。まるでぜんまい仕掛けのロボットのようだ。
 近づいてくる彼女は、やはり何も変わっていなかった。ライムグリーンのサンゴの首飾りも、いつもどおり。俺はタイムスリップしたような感覚を覚えた。

 思いにふけっていると彼女のほうから、おはようと言ってくれた。「おはよう」俺の声はロボットの様に上擦っていた。改めて1年前の事を詫びると、彼女はかぶりを振って、いいの、と言うと間を置いて「今日は誘ってくれて、ありがとう」と続けた。

 波乗り仲間たちも続々集まってきた。みんなボードをハンドルやコマ地図に持ち変えて、湘南に繰り出すと張りきっている。もっともみんな地元に住んでいるんだから自分の庭を走るようなもんだ。優勝はもらったと浮かれている。

 さっきもらったコマ地図は、どれも知った道ばかりでホッとしたけれど、今日一日彼女と上手く話せるか、気まずくならないかが心配だった。

 見様見真似でコマ地図にマーカーをいれていると、ドライバーズミーティングが始まった。色々説明しているがどうも上の空だ。買物ゲームのお題といわれて我に返った。「あなたの見つけた湘南らしいもの」か。考えていると彼女と目があった。彼女はもう、思いついた風である。
 
 隣の人は一人でエントリーと言っていたが、聞くと三重からの初参加か。昨日の晩に地元を出発し神奈川に明け方着いて仮眠して、すぐエントリーって、こりゃ気合が入ってるな。
 見渡すと他にも気合の入ってそうなチームが、ごろごろいるぞ。
 さっき見かけた美人の180SXなんてラリー直前にフェラーリレッドにオールペンしたとかで輝いているし、うちらの2台後のチームはエントリーリストにはワゴンRと書いてあったけれど、どお見てもボイジャーの新車だよ。えっ昨日納車だって。たまげたね。

スタート

 そろそろ、うちらもスタートだ。何だか徒競争の順番待ちのように、どきどきしてきた。彼女はコマ地図をクリップボードに挟んで準備が出来ているようだ。前のチームが手を振りながらスタートした。いよいようちらの番だ。

 「スタートしてすぐ右折。信号のあるどんつきを右」いつの間にナビゲーションの方法を覚えたんだろう。ホームページで覚えたのかな。俺はと言うと、一つを除いて準備をしてこなかったので、恥ずかしかった。

 言われるままに信号を右に曲がるとすぐさま「300m先信号のある十字路を、左折。目標物は左手前に道路標識。直進茅ヶ崎、厚木。右相模原」またしても言われるままに、信号を左に曲がる。返事をする間もない。

 「次は5キロ先信号のある十字路を左折。目標物は左手前にエッソ。左手奥にJOMO」5キロ先か、しばらくあるなと思ったら、ため息が出た。
 
 「怒ってない?」と言ってから、しまったと思った。怒ってないわけ、ないじゃないか。俺らしくない。彼女はかぶりを振った。気まずくなるのが怖くて、カーステのチューニングを78.9MHzに合わせた。車内は湘南ビーチFMのラテンのミュージックに包まれて、その場の空気を和らげてくれた。

 5キロ先はあっと言う間にやってきた。「次は1キロ先信号のある十字路を右折。目標物は左手前に三菱自動車、右手奥にフジゼロックス。この先オドメーターチェックポイント」見事なナビゲーションだ。

 「この先は松波ね」と彼女が助手席の窓を少し開けると、国道134号の喧騒と潮の香りがスッと入ってきた。防風林の切れ間からは青い海が見えた。今日も波がない様だ。わずか10日前にあそこで波にゆられながら、1年前のことを思い起こしていたなんて信じられなかった。

 物思いにふけっている間もなく「次は1キロ先信号のある右ト字路を右折。目標物は右手前に交番。辻道海浜公園ね」と彼女。最後のフレーズは、コマ地図には無かった。同じように1年前を思い出しているのだろうか。あの日、約束をすっぽかされて一人で鎌倉に行っていると思っていたが、ここで波にゆられる俺を見ていたと知ったのはずっと後になってからだ。

 「信号を曲がったら、次はロイヤルハワイの手前を左折ね」と言われたが、その手前の公園の駐車場に車をすべらせた。曲がる直前で距離を読みあげると、彼女は22番目のコマ地図の左に丁寧な字で「48.25Kmブレーク」と書きこんだ。

 まだ海水浴シーズには早いためか、駐車場は半分空いていた。2番目のレーンに向かった。奥から3番目の112番が定位置だ。111番にはいつものように、波乗り仲間のシルバーのシトロエンが停まっていた。

 彼女はその華奢で長い腕をのばしてリアシートから麦わら帽子をとってポンと叩いた。その青いリボンのついたオリエンタルな麦わら帽子は去年の初夏に平塚のラスカで二人で買ったものだった。

 窓を5cmだけ空けたまま、彼女は外に出てのびをした。続けて外に出た。ボードを持たずにここに来るのはどれ位ぶりだろう。のびをしていると彼女はもう海岸に続く橋の方に歩き出していた。

 雲が出てきて、木陰にいる様に気持ちが良かった。小走りに彼女を追うと橋のたもとで追いついた。橋の上から見ると、海の上には雲がなく、風もなく、しわくちゃにしたパラフィンの様にきらきらと輝いていた。

 ぺた凪にあきらめたのか、海の上にはサーファーは5〜6人しかいなかった。後の連中は甲羅干しやボードの手入れをしていた。海岸に下りると二人に気がついた何人かが「おやっ」という顔をしたり、「ははー」と言う顔をしている。

 波打ち際まで行った彼女は貝を拾いはじめた。見る見るうちに両手いっぱいにあふれるくらい集めてニコっとした。「麦わらを取って」そうすると、貝をその中にやさしくあけた。そしてまた貝を拾いはじめた。俺はあひるのお散歩の様に、彼女の後ろをついて歩いた。
 橋からもう200mくらい歩いたろうか。麦わら帽子の半分ぐらいは溜まっていた。振り向きざまに彼女はまたニコっと笑った。

 公園に戻って、いつもはボードを洗う水道で彼女が貝を洗っている間に事務所でビニール袋をもらってきた。洗った貝はまだ滴がついていて、磨いたようにきれいだった。彼女は受け取ったビニール袋に箱庭でも作るように貝を大事に入れると、口のところをポニーテールを結んでいたゴムで結んで、プレゼント風にまとめた。

西湘バイパス

 「ここは、いつも気持ちがいいわね」助手席からだと海が左手に見える。今の時間帯は走る車もまばらで左車線をゆっくり走って景色を楽しめる。70キロまで速度を落として横目に海を見ていると、追越車線をFireBladeが150キロくらいで抜いていった。そのジャケットからラリーの参加者だとわかった。

 大磯ロングビーチが右手に見えてくると、彼女は「次は西湘パーキングエリアね」と言った。ゆるやかなカーブの向こう側に海を隔ててパーキングが微かに見えた。

 パーキングの中ほどに設定された、第5チェックポイントには、ライムグリーンのホンダBeatが、太陽の光を浴びて誇らしげに停まっていた。見渡すと参加車両が後2〜3台いる。

 コマ地図も後1ページだけとなったが、朝から何も食べていないせいか、お腹が空いた。久しぶりのデートだと言うのにラーメンじゃ我ながら芸がないなと思ったが「ここでお昼にしましょう」と彼女から言いってくれたのでホッとした。

 売店で食券を買おうとしたら、袖を引かれた。彼女がいたずらっぽく笑ってトートバックからランチボックスを取りだした。胸の高さまで上げて「リブサンドおまち」と再び笑った。何だか泣けてきた。

 西湘バイパスは小田原インターで下りたと思ったら、すぐにUターンして西湘に乗る設定だった。二宮の彼女の家までは国道1号で行く事が多かったので西湘の上り線は久しぶりだ。パイパスだと彼女の家が見えるところまでは3分もかからない。

 「次は西インター出口で下りてね」と言ったきり彼女は黙ってしまった。助手席から海を眺めているのか、こちらを見ているのかは定かではなかった。何か気にさわったことでも言っただろうか。

 沈黙が怖かった。なんとかしてゴールまでは話をつなぎたかった。焦ったが、焦れば焦るほど次の言葉が浮かばなかった。長い沈黙だった。この1分が、過ぎ去った1年に等しく感じた。次の1分はさらに長く感じた。頭が真っ白になった。まずい。何か言わなくちゃ。彼女は怒っているのだろうか。

 確かめたくて、彼女の方を見た時に丘の上に彼女の家が見えた。ベランダには黄色いハンカチが一面にたなびいていた。 

表彰式

 表彰式は思いのほか盛りあがった。買物のゲームでは各チームが、それぞれ工夫したものを用意してきて、笑いあり、失笑ありで楽しめた。うちらの貝がらも、嬉しいことに3人が手をあげてくれた。じゃんけんして、幼稚園くらいのかわいい女の子にもらわれていった。その子はうれしそうに、そのなかのいくつかを取ると弟に見せていた。

 チェックポイント賞では何チームもが呼ばれて嬉しそうに、ウインドウォッシャー液をもらっていたが、うちらはとうとう1度も呼ばれなかった。でも、表彰式は盛りあがりに盛りあがりまくった。

 日が沈む頃、各チームはまだ表彰式の残り香を楽しみながら、それぞれの家路についた。

 日が大きく西に傾き、やがて空は茜色に染まった。公園にはもう二人しかいなかった。ベンチにたたずんで西の空を見るともなく眺めていた。たわい無い話をしていたが、ふと会話が止まった。

 俺はポケットから手のひらに乗るくらいの貝を取りだして彼女に差し出した。「あら、きれいな貝ね」受け取って、裏も見ようとしたら中から、コトッと音がした。
 
 あらっ、という顔をして、そっと貝を開けると、彼女の瞳にエメラルドの指輪が映った。 



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