資料:

違法検問

このウィンドウを閉じるにはシステムのクローズボックスを使用して下さい 
 

集会参加者への検問・所持品検査の強制は違法です

 私たちが集会に参加しようとするとき、しばしば警察官が前に立ちふさがり、「検問」と称して所持品検査を行おうとします。
 しかし、所有者の許可を得ない検問=所持品検査は違法です。とりわけ、機動隊が2列に並んで検問に応じなければ通さないというような形態で行われる検問はそれ自体が違法です。
 刑事訴訟法197条1項但し書は、警察の捜査などにおける「強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない」と規定しています。この場合の「強制」には、直接の強制だけでなく、「検問に応じなければ集会に参加させない」というような“間接強制”も含むことが広く認められています。そして、刑訴法が“強制的な検問”を認めていない以上、警察官がむりやり所持品検査を行うことはできないし、私たちがそれに応じる義務もありません。

● 堺市大浜公園事件(判例タイムズ741号238頁)

… 事件名は仮称です …

 事件は、1986年5月11日午前8時前、大阪府堺市大浜公園で開催された集会とデモに参加するため、鎌ケ崎日雇労働組合の組合員約90人が公園に入ろうとしたところ、出入り口付近に阻止線を張って検問しようとした機動隊と押し合いとなり、その中で、組合員が、木製警杖を機動隊員に投げ付けたとして公務執行妨害罪と傷害罪で逮捕・起訴されたものです。
 大阪地裁・高裁は、「本件検問は所持品検査の要件を具備しない違法なものであった」として、公務執行妨害罪の成立を否定し、判決は高裁で確定しました。
 検察官は第1に、「検問は(警職法 2条1項の定める)職務質問に付随する所持品検査で適法」と主張しました。しかし、大阪高裁は、最高裁が米子銀行強盗事件判決で示した“承諾なき所持品検査”を行う要件である「必要性」「緊急性」は認められないと否定しました。
 前記最高裁判決は、事実上の強制捜査である“承諾なき所持品検査”を、任意手段である職務質問に付随する行為として認めている点で、令状主義を否定した反動判決ですが、それゆえ職務質問の際に常に検査は可能とは言えず、「所持品検査の必要性・緊急性」「個人の法益と公共の利益の権衡」を考慮し、「相当と認められる限度においてのみ許容」と、それを限定せざるをえなかったのです。
 そもそも、職務質問には「犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」が必要です。したがって、集会やデモに参加しようとしているだけで職務質問を行うこと自体が許されません。まして、承諾なき所持品検査を行う「必要性」「緊急性」が存在するわけはありません。
 そこで検察官は第2に、「警察法 2条1項に定められた警察の責務(公共の安全と秩序の維持)を根拠に検問は許される」と主張しました。
 しかし、大阪高裁は「本件で行われた相手方の承諾のない所持品検査のように、相手方の意思に反して、国民の権利を制限し、これに義務を課す場合には、その権限を定めた法律の規定が必要であり、同法二条一項の規定によってこれを根拠づけることはできない」と、明確に検察側の主張を否定しました。警察自身も、警察法2条1項は警察活動の一般的根拠規範であり、命令、強制などには別に個別の法令の根拠が必要ということを認めており、同条項を根拠に所持品検査を強制することはできないのです。

● 上野公園水上音楽堂事件(判例タイムズ872号244頁)

 事件は、次のようなものです。1990年6月17日、上野公園水上音楽堂で行われた集会とデモにおいて、機動隊員が検問を行おうとし、参加者ともみ合いになりました。その際、違法検問監視行動を行っていた弁護士が、被検問者を解放するために割って入ろうとしたところ、公務執行妨害罪で現行犯逮捕され、33時間後に釈放されたため、弁護士が違法逮捕として国家賠償を請求したものです。
 東京高裁は逮捕の違法性を認め、被告東京都に100万円の支払いを命じ、判決は高裁で確定しました。東京高裁は、逮捕の口実となった弁護士による暴行を否定しただけでなく、現行犯逮捕の前提となった検問と所持品検査の違法性を認定して、現行犯逮捕そのものを違法としたのです。
 東京高裁は、当該被検問者には「所持品検査を行うまでの不審な行動は認められない」と職務質問の要件を否定しただけでなく、警察法2条1項という根拠についても次のように否定しました。
 判決で認定されたこの日の検問は、機動隊員が幅3.5メートルの歩道上に2列で片側1メートル程度の間隔で向き合う形で並びました。そして被検問者4人が1列になって通常の歩行速度で列の間に侵入したところ、列の奥にいた隊員が楯の向きを変え、列の先端を封じる形にしました。その後、隊員が所持品の提示を求めるとともに4人の所持品を引っ張ったり、体に触れたりした結果、一人のナップザックの口が開いてしまったというものです。
 これはしばしば、機動隊が行うやり方ですが、こうしたやり方について東京高裁は、「被検問者の自由な意思決定を阻害するおそれが高く、検問の手段としては著しく相当性を欠くもの」であり、それゆえ「本件検問は、任意の協力を求める検問としては、その手段の相当性を著しく欠いた違法なものであった」と認定したのです。
 そして、そのような検問と所持品検査は、「当該行為時においてもはや公務の執行として公務執行妨害罪の規定による保護を受ける適格性を失っていた」と、違法な検問は公務ではないと認定して公務執行妨害罪の成立を否定し、それを根拠とした現行犯逮捕も違法としたのです。
 この点は非常に大切です。検問と所持品検査の違法性を認定しただけでなく、そうした違法警備に対する抗議行動の正当性を認定して、それに対する公務執行妨害を口実にした弾圧は許されないと宣言したからです。

 違法な検問・所持品検査に対して厳しく抗議するだけでなく、機動隊員の所持品検査の強行を実際に許さない闘いを行うことは、裁判所も認めざるをえない正義であり、労働者・市民の当然の権利です。ぜひ、ともに違法検問を許さない闘いに立ち上がって下さい。