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この花と出会うのははじめてだった。 にも関わらず、胸一杯に広がるこの懐かしさは一体何だろう。 温室の人造池の水面に黙って漂っているだけなのに、その無言の威光が 見るものの喧騒を拭い去る。 そうして、時の流れさえも止めてしまいそうな、凍るような静寂を生み出しながら、 まるでこの花は微笑さえ浮かべているかのようだ。 ---------- 静けさを忘れ、微笑を忘れ、ただひたすら塵間を走り回って果てる日々を、 もう幾年過ごしてきたことだろう。 日々の断層の狭間で擦り切れてしまった心には、遠い昔のあの夢は、 あまりに清らかで、まばゆくて、天上でさんざめく星のような遠さを思わせる。 ---------- この花を見てそんなことを思った。 いつかどこかで見たような花… それは遠い日に見た夢の残像なのかもしれない。 |
